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「桜-貴女に微笑む・精神美-」

※キャラクターの性格が原作と滅茶苦茶違います。特に紗重さん。
イメージを壊したくない方は、このままお戻りください。

「桜-貴女に微笑む・精神美-」


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「大切にします・・・・、ずっとずっと・・・・。一生大切に持ってます」 

自分の渡した髪飾りを握り締め、彼女は微笑んでくれた。
一生の宝物にします、と言ってくれた事も嬉しかったけれど。
彼女が微笑んでくれた事。喜んでくれた事。

その事が一番、嬉しくて。
その微笑は、自分の記憶の中の一番の宝物にになった。 

 

***
 
 

「絶対に間違いないわよ! 本当に見たんだから!」 

夏に入りかけた日の午後。暑くもなく、かといって涼しいというわけでもない。日差しは少し暑く感じられるものの、吹く風は梅雨の名残を残しており、冷たさを含んでいる。

何時もの通り、”彼女”が作ってくれた昼ごはんを食べて。普段は自分達の傍を離れない妹の千歳は、この時間は昼寝をしているし。自分達の家に滞在している親友の青年は、昼食の後直ぐ外へと出て行ってしまっているし。

特に何もする事の無いまま、のんびりとした時間を過ごしていた立花兄弟の下に台風が飛び込んできたのは本の30分ほど前のこと。着物の裾を振り乱しながら、幼馴染の特権を利用し他人の家の奥まで突進してきた台風は、二人が良く知る少女。その名前を黒澤紗重といい 、立花兄弟にとっては、ある意味ハリケーンよりも地震よりも、どんな天災よりも恐ろしい少女だった。

「ちょっと、何なのよこのナレーション! 人を勝手に天災呼ばわりしないでちょうだい!」
「・・・・何に突っ込みいれてるのさ、紗重・・・」
「人外魔境に足を踏み入れてると思ってたけれど、とうとう足だけじゃなく全身どっぷり漬かっちゃったみたいだね・・・」

幼馴染の気安さか、はたまたある意味、”彼女”を巡って非常に特殊な関係のせいか兄弟達の言葉に容赦というものは無い。だが何時ものことなのだろう、紗重は特に気にした様子もなく。

「そんな事より、樹月君、睦月君、私の話ちゃんと聞いてるの?」

可笑しな突っ込みで自分から話を脱線させたくせに・・・。
っていうか、俺達の穏やかな時間を返してくれ・・・。

と、内心は不満だらけで、突っ込みを幾つも入れるものの(勿論心の中で)、「聞いているよ」、と先を促すのは紗重の言葉に”彼女”の名前が出ていたからだ。

「聞いてるって、で? 綾と宗方がどうしたって?」

どうも真面目に聞く気が感じられない睦月の言葉に紗重はムッとした表情を浮かべながら、それでも胸の内を吐き出してしまいたいのだろう。漸く口を開き出した紗重に二人はやれやれ、と内心でため息をついた。だが彼女の口から語られた内容に二人にも思いがけないことだった。

「だから、宗方君よっ! あのヘタレ、八重だけじゃなくって、綾にまで手を出してたのっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」

つい固まってしまったのは、仕方ないだろう。それでも何とか立ち直ったのは、普段から冷静沈着と言われる樹月だった。

「・・・・・・・紗重、夢見るんだったらせめて、自分の家の中で誰にも迷惑かけないように準備してからにしてくれないかな」
「ってか、夢だってありえないだろうが。紗重、いくら何でももうちょっと信憑性のあるもの見るべきだと思うぞ、俺は」
「だからっ、本当に見たって言ってるでしょうが! ちょっとは人の話信じなさいよ!!」

で、冒頭の台詞に戻る。
そもそも紗重もたかが夢であれば、これほど大騒ぎはしないだろう。嫌な夢を見た、と感じるではあろうがそれだけだ。本物の綾の顔をみれば、そんなもの直ぐに忘れてしまえる。けれど、ただの白昼夢だと、幻だと思いきれるほど紗重は楽観主義者ではないし、夢想家でもない。むしろバリバリの現実主義者だ。

「・・・・だってねぇ。綾と宗方って組み合わせからしてもうありえない事だしね」
「あの宗方に二股かける甲斐性なんて無いだろ。大体、あいつ八重にさえ自分の気持ち言えてないじゃないか」

親友が語るとは思えない、宗方青年にとってはかなり酷い言われようだが、本当のことだから仕方が無い。紗重にとっても、二人の言葉は本音だったようで。うんうん、と納得している部分さえある。

宗方良蔵が紗重の双子の姉、八重に少なからぬ思いを寄せている、という事は樹月、睦月と紗重。そして今はここにいない綾という幼馴染達にとっては周知の事実だった。八重自身にその事は伝えられていないものの、彼女も宗方の事を悪くは思っていないようで。だったらさっさと言ってしまえば良い、と周囲は思うものの(紗重は除く)、肝心の宗方が中々踏ん切りを付ける事が出来ないでいるのだった。

「だって聞いたし、見たんだもの! 宗方君が綾に櫛を渡して、笑い合ってたのを!」
「そりゃあ、笑うだろうね。友達なんだし」
「綾が物を貰うなんて珍しいけど、宗方って来るたびになんだかんだ土産物持ってくるじゃないか。紗重だって貰った事あるだろ」
「違うわっ、その時の綾の顔、本当に嬉しそうだったもの! あれは恋する乙女の表情よ!」
「・・・・・・・・・・・・やっぱり夢だ」
「・・・・・・・・どんな根拠だよ、一体」

訳のわからない根拠を連発する紗重に樹月も睦月も呆れた様子だった。

「第一、仮に宗方が綾に言い寄ったとしても、八重の気持ちを知ってる綾が応えるわけないと思うけど」
「綾って滅茶苦茶そういうとこ硬いもんな」
「甘いわね、恋は良識だろうが人種だろうが、国も性別も超えるものなのよっ!!」
「・・・・・・・紗重が言うと、説得力あるね」
「・・・・・・だな」

これが八重の事であっても紗重は同じ反応をしただろう。 どうもこの幼馴染の少女は、双子の姉である八重と綾に異常なほど好意を持っている。宗方が八重に近づこうものならば、全身全霊をかけて威嚇は勿論、それこそ何が何でも邪魔をするし。樹月と睦月が綾に近づこうとするのであれば、これまたやはり、射殺さんばかりの過激な妨害をしかけてくる人物なのだ。

大方、二人が自分の知らないところで会っていた事が悔しいのだろう。勿論自分達とて良い感じはしないがそこまで彼女の行動を制限する権利は自分達には無い。たとえば恋人同士であっても(違うけれど)。彼女が、立場上、彼らに従事する身であっても、だ。

綾が立花家にやってきたのは、千歳が生まれた直後のこと。綾の母親が亡くなり、身寄りが無くなった彼女を父親の守一が引き取ったのだ。今よりも幼く、まだ身体が丈夫ではなかった睦月の世話係として。彼らの母親が亡くなった後は、千歳の子守もかねるようになり。今では立花家の家事全般を取り仕切る身である。

守一が、綾を初めて立花家に連れてきた日のことを、樹月も睦月もまだよく覚えていた。彼女の身体は、同年代の自分達と比べても、余りに細くて小さくて。来ていた着物が紺色だった、ということもあるのだろうけれど、肌が異様なほど白かった。人形のように大きな瞳と赤い小さな唇。けれどその瞳には何の色も浮かんでは無かったし、唇は言葉を発する事も、形作ることも無かった。

無表情で、無口。
整った顔をしているだけに、それは更に際立っていた。
そう、本当に人形のような少女だった。

後から父親から聞いた話では、彼女は特殊な生まれをしていたそうで、そのせいで親戚や村人から良い扱いを受けられなかったらしい。母親も綾を生んだ直後から身体を壊し、充分に娘を護ってやることが出来なかった。自然と家の中に居る事が多くなり、話す相手も母親だけ。父親は村の外の人間で、綾が生まれる前に亡くなっていた。極力他人と接しず、ただ一人で過ごすことの多かった綾はどうやって他人と接すれば良いか解らない子供だった

立花家にやってきた当初も、よく働くし、話しかければ返事もする。けれど、それだけだった。笑う事もないし、自分から話すこともない。そんな彼女に、樹月も睦月もあれこれと気を使い。暫く後に、紗重と八重も加わって。漸く笑ってもらえるようになった。

初めは手のかかる妹に対するようだった感情も、段々と別なものへと変わっていき。八重はともかく、紗重が綾に対して異常な思いを抱くようになったのは想定外であったが。歳を重ねる毎に綺麗に変化していく綾に、悪い虫が付かないように蔭でこそこそと涙ぐましい努力などして。それこそ大切に護ってきた彼女を紗重は勿論、例え親友であろうとも渡す気は無いが。

それでもやっぱり、自分の意思で選んでもらいたいと思うのが男心というものだろう。綾と宗方が・・・という紗重の話を信じるつもりはないが、他人が見ているほど平静でもいられないのが実情という所だ。早く綾の姿を見て、安心したい。彼女がここにいる、という事を確認したい、とそう思う。

けれど、望んだ少女の足音の代わりに、聞こえてきたのは思い人のではなく、それより小さなトテトテという擬音語が似合いそうなもの。

『綾おねーちゃーん、どこー? お着物着るの手伝ってーー!!』

家の二階から聞こえてきた小さな声。妹の千歳のものだと直ぐわかった。どうやら昼寝から覚めたようだが、珍しいな、と樹月達の間に僅かな疑問が生まれる。何時もなら千歳が起きる頃を見計らって、綾が千歳の部屋へ訪れているはずなのに。暫く様子を伺っていたが、トテトテという軽い足音が聞こえてくるばかりで、千歳の声に答える者はいなかった。

『おねーちゃーん・・・・・・、どこ・・・・?』

声のトーンが変わってきた。そろそろ泣き出す一歩手前だと判断した樹月が腰をあげる。そのまま二階へと上がっていった彼は、暫くした後、千歳をその腕に抱きながら睦月たちのいる部屋へ戻ってきた。

「あ・・・」

樹月の腕に抱かれながら、部屋へと入った千歳は、中にいるのが睦月だけでなく、紗重までもいたことに不満の声をあげた。勿論紗重もそんな千歳の反応に慣れているのだろう、気にした様子もなくお茶をすすっている。千歳にとって、綾は姉であると同時に、母親代わりでもあった。そんな彼女に何かとちょっかいをかけてくる紗重は、面白くない存在なのだろう。彼女が紗重に突っかかって行く光景は 立花家で既におなじみのものになっていた。

「樹月おにいちゃん・・・・」

むくれた妹の声に樹月は苦笑をもらしながらも、彼女を抱えたまま睦月の隣へ腰を下ろす。

「よく眠れたか、千歳」

ポンポンと睦月が小さな頭を叩いてやると、千歳は「うん!」と明るい声を上げた。だが目当ての人物が室内にはいないことを知ると、直ぐにシュンとした表情になる。

「お兄ちゃん・・・、綾お姉ちゃん何処・・・?」
「さぁ・・・、買い物にでも行ったのかな?」
「大丈夫、直ぐに戻ってくるよ」

大好きな二人の兄に優しく諭されて、千歳も漸くその顔に笑みを浮かべた。ふんわりとしたその表情に、兄二人の表情も自然と穏やかなものになる。だが―――

「そうだね。綾お姉ちゃん、また良蔵お兄ちゃんと一緒なのかな。じゃあ、直ぐに帰って来るね」

無邪気な妹の言葉に、一同は一瞬で固まった。

「・・・・・・・・千歳」
「なーに、樹月お兄ちゃん?」

きょとん、と首をかしげる千歳には嘘や冗談を言っている様子はなかった。

「綾が宗方と一緒って、本当?」

僅かにトーンの下がった兄の声に、気づく事もなく。千歳は無邪気な笑みを浮かべたまま、兄の質問に大きく頷いた。

「うんっ! 昨日もその前も、一緒に出かけてた!」
「へ~~~・・・・・・」
「昨日・・・昨日もその前も・・・って、それで何度会いに来てもいなかったのね!! 宗方君の分際で生意気なっ!!」
「これって、ひょっとすると・・・・ひょっとするって展開? うわぁ・・・、一番の害虫が身近にいたなんてね・・・・」

ちなみに上から、樹月、紗重、睦月の順番。
紗重からは既に、赤を通り越して黒いオーラが出ていたりなんかしている。

「千歳、その話もっと詳しく聞かせてくれないかな?」

普段は穏やかだが、怒るととっても怖い立花兄(樹月)が、ニコニコと笑みを浮かべながら妹に問いかける。だが千歳は兄の言葉に、「ん~」、となにやら考えている様子だった。

「ん~~っとね、駄目なの。詳しくお話できないの」
「何で?」
「だってね、綾お姉ちゃんが、誰にもお話しちゃ駄目なのって言ってたから」

ピシピシッ・・・、と何かに亀裂が走るような音がした。

「・・・・・・・樹月君、湯のみに皹が入ってたわ」

紗重の持っている湯のみは、皹どころか真っ二つに割れていた。だがそれを咎める者は誰もいない。湯のみの一つや二つの事で構っている自体ではないのだから。

「千歳、それ本当に綾が言ったの?」
「うん。樹月お兄ちゃんと、睦月お兄ちゃん・・・後ねえ、紗重と八重には絶対に言ったら駄目って」
「おいおいおいおい・・・・マジかよ」
「うふふふふふ・・・・・・・・、ぬかったわ。私とした事が・・・あのヘタレっぷりについ騙されて・・・」

あわれ、宗方。
紗重の中では、制裁を加える事は既に決定事項。樹月や睦月の中でも宗方に対し、何等かの報復を与える事は確定済み。だが、それよりも二人は信じられない、というより信じたくないという思いのほうが強いらしく。怒っている、というよりも困惑した表情を浮かべていた。

「何が良いかしら・・・・・、やっぱり二度と八重にも綾にも近づけないような、きっついお仕置きじゃないと。私の気持ちも治まらないし・・・」

手っ取り早いのは、やっぱり黒澤家に連れ込んで・・・・・、あれも、これも・・・・・・、と物騒な事を言い出した紗重を止めるものは誰もいない。千歳は自分の言った事が二人の兄と、紗重にどんな影響をもたらしたかが解らなくて、きょとんとしていたし。樹月も睦月も困惑する感情を整理することに忙しく、紗重に構っている余裕など無かった。

あわれ、宗方の命は風前の灯・・・・・。
だが、その時聞こえてきた聞き覚えのある声が、彼を救った?




零に出てくる、とあるアイテムに関する設定を読んで思いついた話です。もうちょっと真面目な感じになる予定だったのに・・・ 。何か、紗重さんの性格違いすぎですね・・・。ちょっと遊びすぎました。紗重さんは基本は、とても優しい良い子だと思います。ただ、自分の感情をコントロールするのがあまり上手くないのでは、とも感じていたので。
番外編は過去話を中心に書いていくるもりなので、そういったことも書いていければと思っています。後編は、宗方×八重になると思います・・・・多分?
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