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2.樹陰

2.樹陰
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やっと、見つけた―――――――
愛しい貴方―― 

これからはずっと一緒――――――――――――
ずっと――――
一つになって――――――――ずっと、一緒――――――



***



『氷室邸』

それは嘗て、氷室という祭司をつかさどる一族が住んでいたという屋敷の名前。山の奥深く、まるで隠されるかのように佇むその屋敷の存在を今はもう知るものは少ない。ただ、麓の町で何か手がかりはないか、と綾たちが情報を集めていた時、既に80は超えているだろうという老女がぽつり、と言った。

『あそこは呪われてるんだよ・・・・』

と。

驚きながらも詳しく聞こうとした二人であったが、老女はもうそれ以上何も言う気はなかったらしく、それっきり口をつぐんでしまった。途方にくれたものの、何分小さな町だ、余所から来た者は目立つし、真冬や準星たちの足取りはその後直ぐに見つかった。さすがに屋敷前まで、とは行かなかったが、タクシーでかなり近くまでは行って貰えるということだったので乗せてもらうことにする。運が良かったのか、タクシーの運転手から少し前にやはり同じ所まで他所から来た者達を乗せたという話を聞くことが出来た。3人、という事だったのでそれは真冬ではなく準星たちの一行なのだろう。

「東京の結構有名な作家さんだって、言ってたなぁ・・・。取材だって聞いたけど、何であんなところへ行くんだって随分不思議に思ったもんだ」
「屋敷の事、ご存知なんですか?」

深紅が尋ねる。だが運転手は首を振った。

「いやぁ、ってかそんなところに家があったなんて初めて知ったさ。ああ・・・・でも・・・」
「でも?」
「むか~し、そういった偉い神主さんみたいな一族が居たってことは聞いたことあるな。随分昔に爺さんが話してくれたことがあった。だけど、当主が何か錯乱して一族全員を殺しちまったって」
「!!」
「まぁ、よくある昔話だけどな。だからいい子にしてないと、そいつがお前の首を取りに来てしまうぞーって何度も言われたっけな」

はははっ、と運転手は軽く笑ったが。綾と深紅はとても笑える気分ではなかった。その話が真実か、そうでないにしろ、これから自分達が行こうとしている場所で、そんな事が起こったと言われて気持ちよくなる者はいないだろう。

だが行かなければいけない。
真冬がそこにいるかもしれないのだから。 

車の振動とは違う震えが体の中から湧き上がってくるようだった。それは隣に座る深紅も同じであったようで、彼女の方が何かしら感じ取っているのか顔色も悪い。それでも必死で恐怖を払拭しようとしている深紅がいじらしく、綾はそっと深紅の肩を抱いた。自らの抱く恐さが、それで払拭できるように、と願いながら。


***
 

歌が聞こえる。
子供達の幼い声で幾つも幾つも。
 

次の鬼はだあれ・・・?
次の姫はだあれ・・・・?
 

幼い声が幾つも幾つも、耳にこびりつく。
鬼を探して、永遠にさまよい続ける子供達の声が―――――――――。

 

タクシーを降りてからどれくらい歩いただろうか? 手入れなどされていない道は歩きにくく、舗装された道路を歩く時の何倍も時間がかかる。道を遮るように生い茂る草木を払いながら二人は進んだ。時折鳥の声が聞こえてくる以外は全く人の気配が無い山中の様子は、本当にこんなところに屋敷があるのかとさえ疑いたくなるほどだった。

「深紅、大丈夫?」

後ろを歩く深紅を気遣いながらも、綾もかなり限界に来ていた。体力的には自信があるが、正直こんな山中だとは思わなかった。わかっていれば、もう少し歩きやすい服装を選ぶんできたのに、と後悔の気持ちがわいてくる。都会に住んでいると忘れてしまい勝ちになるが、人の手が全く入っていないう場所というのは何処か人の進入を拒んでいるようにさえ感じられる所がある。

島国であるこの国ならではの考えなのだろう。外界に通じる場所、たとえば海などは嘗て人ならざる者達の住む場所、異界に通じる場だとされていた。海から来るもの、様々な漂流物、それは植物や遠い国の存在を示す物であったり。果ては水死者まで人はそれらを異界からのものとして恐れ、敬ったという。

海が魔と繋がるイメージが強い事に対し、山はどちらかというと神聖なイメージが浮かびやすい。海よりも人の身近にあり、様々な恩恵を授けてくれる山々を人は神と崇め、そして敬った。けれど、どちらも人にとっては大きく、理解できないものであった事は間違いないだろう。

大きすぎて、恐ろしすぎて。
だから敬い、奉り、そうして自分達に厄が降りかからないように願った。

西洋の文化が入り混じるようになった現在のこの国では、そのような風習や考えは一見薄れてきているように見えるものの、そういった恐れや敬いという感覚は、実は私達の中、血や記憶というものの中に既に溶け込んでしまっているのかもしれない。

暗いところが怖い
木が鬱蒼と生い茂る森が怖い
足の付かないほどの深さを持つ海が怖い

どんなに払っても
どれだけ人工的な光で照らしても

きっと永遠に私達は恐れ続けるのだろう。
姿の見えない”何か”を。

「・・・・綾ちゃん、あれじゃない?」

深紅の小さな声が指し示した方へ綾は視線を向けた。見れば、道を覆いつくさんばかりに生い茂っていた木々が、そこからは急にぽっかりと開けていた。変わりに見えてきたのは灰褐色の大きな石を組んで作られている頑丈そうな塀と、その中央に佇む古びた門。その少し上に瓦を敷いた屋根の尖塔が小さく見えている。

「・・・あれ、なのかな? そうだよね・・・」

まるで自分に言い聞かせるような台詞を綾は何度も呟いた。こんな山中に家が幾つも有るわけが無い。だとすれば、今目の前にあるのが真冬達が向かったという”氷室邸”に間違いないのだろう。だが、目的の屋敷が見つかってよかった、という気持ちは全く浮かんでこない。反対にそうであって欲しくないという気持ちの方が強く感じられる。

屋敷に近づけば近づくほどその気持ちは大きくなった。
外観がはっきりしてくるにつれて、夢の中の女性の言葉も蘇ってきた。

「あれが・・・・?」
「うん、間違いないよ・・・・夢で見たとおり・・・・・・」

深紅の言葉に綾も頷く。
其処には、夢で見たのと寸分違わない巨大な屋敷。 

”氷室邸”が其処にあった―――。
 

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

氷室邸みたいなのが近くにあったらその町いやだろうなぁ・・・。ということで山の中に建っていてもらうことにしました。ゲームでも結構山深い中にあったような気がしましたし、神社というイメージでもその方が良いかなと。
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