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4-3

「ん~~、おねーちゃんくるしい・・・」

その時アルルゥがアマネの腕の中でもぞもぞと動いた。両者の間に漂っていた緊迫した雰囲気は、アルルゥには伝わらなかったらしく間の抜けた声が周囲に響く。

「ア、アルルゥじっとしてて・・・」

「危ないから」、と続けようとした言葉はアルルゥの「や~」という言葉に遮られた。そのままもぞもぞと動き続けた少女は、アマネの腕が緩んだ一瞬の隙を逃さず、そこからぴょんと小さな身体を飛び出させる。

「アルルゥ!」

止める間も無く、アマネから離れたアルルゥはトテトテと軽い足音を立てながら再びシシェの元へと近づいていった。
「危ないっ!」と後ろでアマネが叫ぶが本人は気にした様子も無く、「ん~~なでなで」と呑気な声を出しながら再びシシェへと手を伸ばし、そしてやはり再びベナウィに其の腕を捕まれた。

「無闇に馬に手を出してはいけないと言ったでしょう」
「ん~~~」

小さな頬をぷっくりと膨らませて、不満を訴えるもののベナウィの手は一向に緩まない。

「やぁっ!」
「嫌では有りませんよ。怪我をしてからでは遅いのですから、大人しくしてください」
「ん~~~!!」

ぷくう~、と益々紅く膨らませた頬を広げながら、じたばたと腕を動かしてはみるものの、やっぱり腕は自由にならない。少女と青年のおかしな攻防。呆気に取られた表情でそれを見つめるアマネに、クロウがポリポリと頭を掻きながら「まぁ、そういう訳なんでして・・・」と困ったように呟く声が聞こえてきた。そして漸くアマネも自分がとんでもない勘違いをしていたのだと気付き、アルルゥとは違った意味で顔を紅く染めた。

「す、すみませんっ!!」

焦っていたとはいえ、自分は恩人にとんでもなく失礼な事をしてしまった。
慌てて頭を下げるアマネにクロウは「いやいや、そんなに気にする事でもないんですけどね」とやっぱり困ったような口調で答える。其の間もアルルゥとベナウィのおかしな攻防は続いていた。

「や~~!!」
「ですから、無闇に手を出さないと約束してくれるのであれば、手を離して上げますと言っているでしょう」
「や~~~な~~の~~!!」

アルルゥは決して頭は悪くないが、頑固な所があり何より理屈で考えるより感情が先に立つほうが多い。ベナウィも小さな子供には理屈を説くだけでなく、少しは引いてやる事も必要だと解るほど子供に対する経験値を持ち合わせていなかった。結果、「嫌なの」「嫌じゃない」という不毛な言い合いが何時までも続く結果になっているわけなのだが。

「アルルゥ、いい加減にしなさい」

流石に見かねてアマネが止めに入るが、やはりアルルゥの口から出るのは「や~」、という拒絶の言葉ばかりで流石にこれにはアマネも困った表情を浮かべる。だが確かにアルルゥは頑固ではあるが、こちらの言葉を聞かないわけではない。聞かないなりに、何か理由があるはずだと漸く冷静になり始めた頭が働き始めた。

「アルルゥ、何が嫌なの?」

腕を捕まれているのが嫌なのではない、そう判断したアマネが問いかけると案の定アルルゥは「痛いのや」、と些か潤み始めた瞳をこちらに向けながら言い返してきた。

「痛い?」
「痛いって言ってる、痛くて歩けないって」

「誰が?」と問い直す前に、アルルゥが「ん!」、と後ろに横たわる白い馬を指差した。
見れば確かに珍しい白い毛並みは、生々しい赤い色に大きく染められており、尚も其の色は広がり続けていた。そうして漸く其処でアマネにもアルルゥが何故突然走り出したのか、何故我を張り続けたのか、その理由が理解できた。

恐らく彼女の獣と心を繋げる力が、この白い馬の声を聞いたのだろう。
そしてこの少女がそれを放っておくはずが無い事もアマネには解っていた。

「アルルゥ、兎に角落ち着きなさい。その子は私が診ますから」

アマネがそう言うと、アルルゥは「ん!」と頷いて漸く暴れる事を止めた。

 
突然呆気なく抜けた力に、自然と少女を掴む腕も緩む。
けれど遮る手が離れても、少女はもう暴れようとも無闇に手を伸ばそうともしなかった。それどころか期待に心を震わせるように、大きな目をキラキラと輝かせ、あれほど固執していたシシェとは逆の方向を見てさえいる。
彼女の視線の先にいるのは、白い女。自らの愛馬の毛並みの色よりも、更に白く長い髪を持った。

彼女の何が少女をそんなに期待させるのか。
見ればパタパタと尻尾さえ降り、「早く早く」と瞳は訴えているかのようだ。

「おね~ちゃん、早く」
「待って、まずはちゃんと診て見ないと」

そういって彼らの近くまで来た女は、其処で始めてベナウィに怒りの色の交えない瞳を向けた。

「触れても良いですか?」
「え?」

女の口から突然出た言葉に一瞬面食らう。
普段から滅多な事では感情を動かさないベナウィの顔に、僅かだが朱の色が走った。

「私、薬師なんです。少しはお役に立てるかもしれません」

けれどたった一言で彼の感情を動かした女は、そんな彼の変化にも気付かないままさっさと視線を彼から外してしまう。
其の目は既に目の前の馬-シシェ-へ向けられていた。

「あ、ええ・・・。お願いします」

その時漸く、彼女の言わんとする事の意味を悟ったベナウィは曖昧な言葉でそれを肯定した。同時に、自分の中に一瞬湧き上がった考えに愕然とする。
アルルゥとのやり取りで些か冷静さを失っていた事は事実だが、それにしても普段の彼なら少し考えれば直ぐに、彼女が何を言おうとしているのか理解できただろうに。先ほどとは別の意味で、頬を朱に染める彼であったが、其の原因となった彼女は既に彼の事など見ておらず。既にシシェの手当てを始めていた。

尤も、普段からあまり感情を出さない為、其の変化は僅かなものでしかなく例えアマネがベナウィの方を向いていたとしても気付かなかっただろうけれど。付き合いの長いクロウが、自分の主の僅かな変化を見逃すはずもなく。

2人(3人)から少し離れた場所で其の様子を見ていた彼の表情には色々な意味の感情が浮かんでおり。そしてそれもやはり、お互いがお互いの感情で忙しい時であった為、誰にも気付かれない内に消えていった。


あとがき
アルルゥの口調が不明瞭。
きちんと話せるのに、話してないみたいに見えてしまう・・・・。
そしてベナウィさん。何を考えたのかな~♪ やはり奴も男、って所を書きたいんですが力量不足ですな。もっと悶々とする彼を書きたい!!
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