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4-2

走った、名前を何度も呼びながら。
なのに捜し求める少女の姿は何処にも見当たらない。
確かにこっちに来たはずなのに、と首を何度も左右に振って確かめるが道らしい道は今自分が立っている場所のみで、あとは鬱蒼とした木々が立ち並んでいるだけだった。

「アルルゥっ!!」

もう一度名を呼ぶ。けれど応える声は無い。
もしかしたら森の中に入ってしまったのだろうか。普段から姉のエルルゥと供に薬草取り等に出かけているから、森の中にも慣れてはいるだろうけれど、それはあくまで村周辺の森でなら、という意味だ。ましてやこの辺りは軍の演習地として使われており、決して安全とは言えない場所である。

「アルルゥっ!!」

既に悲鳴に近い声しか出ない、大切な、大切な子なのに。
大切な、父親の大切な"娘"なのに。

その時、前方から「くるる」、と小さなウォプタル(馬) の声が聞こえた気がした。
か細い声はもしかしたら気のせいかもしれないけれど藁にもすがる思いでアマネはそちらへ向かって駆け出した。
ウォプタルがいるのなら、人もいるはずだ。 もしかしたら一緒にいるかもしれない、姿を見ているかもしれない、そんな風に願いながら足を進めた。

そして其の願いは、数歩進んだ先で叶えられる事となった。
探し求める少女の姿を其の先に見つけたとき、浮かんだのは安堵と喜びの感情。

「アルルゥ!」

其の少女の名前を呼ぶとき、それが義務感や責任感から来るだけでない確かな感情が宿っている事に彼女は気付けない。
ただ少女の傍に行かなければならない、とただそれだけを思っていた。

 
***

 
ぴょこり、と少女の垂れ下がっていた耳が上へと上がる。
聞こえてきた悲鳴にも近い声、けれど何処か安堵感を含ませたそれは恐らく少女の肉親の者が発したものなのだろう。
見れば、少女も喜んでいるようで表情こそ変えていなかったけれど、耳や尻尾が上へ下へと世話しなく動いている。
兎に角これで不毛な状況から、少しは抜け出せるだろうと声のした方へ視線をやった。
次の瞬間、彼の耳に飛び込んできたのは安堵とけれど何処か怒りを宿したような女の声だった。

 

「其の手を離してっ!」

 

求めていた少女の姿を見つけた安堵感は直ぐにその腕を取る男の存在に打ち消された。
甲冑を纏った姿はどう見ても農民とはかけ離れており、かと言ってこの国の一般兵がするような服装でもない。
明らかに高位の、それなりに地位を持った男、それがアルルゥの腕を掴んでいる。その瞬間頭の中に浮かんだのはこれでもか、と言うほど悪い考えばかりで。

ヤマユラで暮らし始めてからというもの、ヌワンギやササンテ等、ある意味最低な部類に入る"地位を持った人間"ばかり見ていたアマネにとって、その時浮かんだ考えが悪いものばかりであった、というのは有る意味当たり前の事だったかもしれない。
普段ならもっと冷静に物事を考えられるのだが、この時は不安と疲労、そしてただ目の前の少女を取り戻したいという感情だけが頭の中を支配していた。
そして其の感情のままに行動する事を止める者はこの場所には居ない。

「其の手を離してっ!」

其の言葉が口から出た次の瞬間、アマネはアルルゥとその彼女の腕を取る青年の間に割って入っていた。
小柄な少女の身体を抱きしめながら、唖然としている目の前の男を睨みつける。

 

 

それほど強く掴んでいたわけではないが、少女の腕があっさりと離れていったのには少し驚いた。
行き成り怒鳴られた事に、自分が思う以上に驚いてはいたのかもしれない。
自分と少女を分け隔てるように割り込んできた白い身体。怒りを露にした青い瞳が自分を睨みつけている。
けれど其の腕に抱かれた少女はやっぱり表情を変えず、「ん~」と解らない言葉を口にしているだけだった。

「この子が何か失礼な事をしたのであれば、私が謝ります。だからこの子には何もしないで!」

怒りに満ちた声がベナウィに向けられる。
口調だけを見れば謝罪の形をとっているものの、彼女が自分達に悪意の感情を持っていることはその雰囲気から明らかだった。
まるで自分達が少女を害そうとしたかのように。
こちらとしては突然現れた見知らぬ少女に対し、怪我をしないように気を使ってさえやったというのに、何故その様に思われなくてはならないのだろうか。

「あ~、まぁ、何だ」

後ろでクロウが困った様に呟く声が聞こえてくる。
彼も目の前の女が自分達をどう見ているのか気付き、どう対処すべきか考えあぐねているのだろう。

「そう見えちまうのはまぁ、仕方ねぇって言うか・・・。いやいや、仕方なくは無いんだが・・・・・」

言葉を考えながら紡ぎはするものの、見た目通り武人体質のクロウは言葉でもって相手を納得させるより身体で納得させる方を得意としていた。
当然、女子供の扱いなど慣れているはずも無く、出てくる言葉はしどろもどろで、上手い言い方とはお世辞にも言えない。
案の定、何を言っているんだ、と女の目は益々刺々しいものに変わってしまっている。かと言って、どうすれば良いのかと考えも浮かんでこなかった。
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