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3-1

「貴女様が気に病む事ではありません・・・」

ただ黙って頭を足れるアマネに、ぽつり、と呟くような声でトゥスクルが答えた。
トゥスクルは契約の場には居なかった、ただ瀕死の状態のハクオロが彼女の家に運ばれてきて、その治療を行っただけ。

だからエルルゥが何を願って彼と契約を結んだのかは解らない。けれど、想像をつけるのは容易かった。アルルゥの洋服に、土と一緒に血が付いていた事に気づければ----。

「・・・・もし、あの場にあの方がいらっしゃらなければ、私はアルルゥを失っていたでしょう」

エルルゥが彼と契約を交わした事は悲しく思う。できれば孫達には、この村で穏やかに一生を送ってもらいたかった。けれど"彼ら"が目覚め、そして契約を交わした彼女はこれから起こるだろう騒乱に嫌がおうにも巻き込まれる事になる。
それでも-----。

「あの子が望んだ事です。なら、受け入れていける、進んでいけると信じています・・・・」
「トゥスクル・・・・・」

身内が騒乱に巻き込まれる事を望む者などいない。この穏やかな生活を壊される事に憤りを感じずにはいられない。けれど、冷たい亡骸を抱く事になるよりはずっと良かった筈だ。
少なくとも、アルルゥは契約がある限り死ぬ事はないし、エルルゥも契約者ゆえに彼に守られる事になる。

ヤマユラの里は、辺境に位置する故に戦乱と離れていられるが、全く無関係ではないのだ。それに戦火に巻き込まれずとも、理不尽な事はいつだって起こりうる。彼がそばに居れば、それからは逃れられる。少なくとも、死の危険からは逃れられるのだ。

自分が残される痛みを負う事も無くなる――――――――。

「・・・わかりました、もう言いません」

彼女がそれを受け入れているのなら、自分がもう何を言っても彼女は考えを変えないだろう。
そうして、こういう頑固なところは変わっていない、と思う。彼女は一度決めた事を覆そうとはしなかった、どれほど難しくとも諦めず、進んでいった。きっとその資質は彼女の孫達にも受け継がれているはず。
なら、あとは彼女たちに任せるべきだろう。

「どうか、父を、いえあの方をお願いします――――」

そう言って再びアマネは頭を足れた。


***


その後は、2人とも契約の事もハクオロの事も一言も話さずに、ただ今の事だけを話した。
トゥスクルの事、エルルゥの事、そしてハクオロがヤマユラの里に来た後の事。気づけば、まだ薄暗さの残っていた空は白み、太陽が輝く時刻に変わっていた。
けれどその事に気づいたのは、扉代りに掛けられている布越しにエルルゥの声が聞こえてきた時だった。

「おばあちゃん、えっと・・・・アマネさん。朝ごはん、出来たんですけれどどうしますか?」
「おや、もうそんな時間なのかい?」

「入って良い?」、という声と共に布が捲られエルルゥが室内に入ってくる。そうして2人の傍に膝をつくと、アマネに向かって「初めまして」、と頭を下げた。

「えっと、エルルゥと言います。よろしくお願いします」
「こちらこそ、ごめんなさい、きちんと挨拶もせずに」

その礼儀正しい態度に、アマネはは直ぐ彼女に好感を抱いた。「何も無い処ですけれど、ゆっくりしていって下さいね」、と少し頬を染めながら、ほほ笑む彼女から、それがおべっかでも何でもなく心からそう思っている事が感じられる。
その優しい笑みから、アマネは彼女なら父、いやハクオロに良い影響を与えられるかもしれないと感じた。

記憶が無く、まっさらな状態。
過去の辛い記憶や悲しい別れの記憶が無い状態であるならば、もしかしたら彼が望んだ生が過ごせるかもしれない。
不安ではあるだろうけれど、それは彼女がきっと癒してくれるはず。

何よりも、ここには彼の娘が居る。
正真正銘、彼とミコトの血を受け継いだ娘が。
なら――――――自分は不要だろう。

「・・・ありがとうございます。けれど、私はもう行かないと」

そう告げた瞬間、どんっ、と身体に軽い衝撃が走った。


【あとがき】
トゥスクルさんって、どんな少女時代を送ってたんでしょうか…。
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