FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2-1

-おそらくトゥスクルの部屋-に通され、2人きりになって漸くアマネは息を吐き出した。
父と会い、彼の記憶が失われている事を知り、そしてミコトの、ミコトと父の血を引く娘に出会った事。それは思う程強くアマネの心の中にずっと存在していた傷を強く抉っていた。
そんな彼女の心境を読んだのか、傍らでトゥスクルが心配げな眼差しを自分に向けていた。

懐かしさが途端、アマネの中に広がった。顔立ちは変わっても、その瞳の色や眼差しの優しさは記憶の中にあるものと変わらない。何十年も共に居なかった筈なのに、彼女と共に在った日常がまるで昨日の事の様に鮮やかに頭の中に浮かんでくる。

「・・・・・・久し、ぶりですね」

そうアマネが口にすると、トゥスクルはすっかり皺の刻まれた顔に深い笑みを浮かべた。

「お久しぶりでございます、アマネ様・・・・」

嘗て、薬師の師と弟子として。そして共に闘う戦友として2人は共に在った。
既にトゥスクルは師が必要な程子供ではないし、アマネも彼女の師である事はとうの昔に放棄している。それでも、今ここにいる瞬間の2人は嘗ての師と弟子であり、戦友であり仲間だった頃の2人だった。

「・・・・顔をあげて下さい、私の方こそお礼を言わなくては。あの方を、父を助けてくれたのでしょう。ひどい怪我を負っていたと聞きました」
「はい・・・、孫が、エルルゥがあの方を連れてきたのです。驚きました・・・・、まさか再びお会いできるとは思ってもいませんでしたから」

「それに、まさか記憶喪失になっているとは・・・」、と苦笑をしながら呟かれた声にアマネも困った様な笑みを浮かべる。

「エルルゥ・・・、貴女のお孫さん?」

聞かなくとも既に答えは解っていたけれど、そう問いかけたアマネにトゥスクルは深く顔を上下させた。

「そう・・・、やっぱり良く似ていますから」

ミコトに、そして嘗ての貴女に、と呟かれた声にトゥスクルは皺の寄った顔に深い笑みを浮かべる。
穏やかに微笑む表情は、嘗ての彼女には見られなかった顔だった。それでも笑顔はまだ嘗ての面影を呼び起させる。
けれど湧き上がってきたのは、懐かしさばかりでなく、それよりも悔恨の感情の方が深かった。自分達に再び関わらせてしまった、という深い悔恨の念。

「私は・・・・貴女に謝らなければならないのでしょうね」

「何を?」、とトゥスクルが怪訝そうな表情を浮かべる。だが気づいていない筈がない。何故なら彼女は知っているのだから、彼が、父がどういう存在なのかを。彼女は"契約者"ではなかったけれど、契約をした人間が嘗て彼女のすぐ傍に居たのだから。

「エルルゥ、の事でしょうか・・・・?」

やっぱり気づいていたのか、と思いながらアマネは頷いた。
父がここに存在するのであれば、必ず誰かと契約は行っているだろうと思っていた。
眠りについていた父を呼び起こすには、強い思い、願いと呼ばれる力が必要だから。

そしてトゥスクルには契約者としての気配も、強く願いを抱く様な気配も感じられ無い。
対してあのエルルゥという少女からは、父の気配が強く漂っていた。そして何故かアルルゥと呼ばれた少女からも父の力が強く感じられた。
恐らくエルルゥがアルルゥの事で何かを願ったのだ、そして父がそれに応えた。彼女と契約する事で。


【あとがき】
分身がディーによって起こされて、それに付随する形で空蝉も起きたんだと思われます。
で、エルルゥの願いに引かれてやってきた、という感じですかね。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

たつやん

  • Author:たつやん
  • FC2ブログへようこそ!
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
12  07  02  11  09  08  07  06  05  04  02 
cloverclock
カテゴリー
Yggdrasil
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。