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1-6

「もう入っても大丈夫ですよ」

パサリ、と布を掻き揚げて部屋の外へ出た途端、オボロがアマネの身体を押しのけるように部屋の中へ入っていった。
治療の邪魔だとトゥスクルに追い出され、それでも妹の身が気がかりで一時も気を休める事が出来なかったのだ。漸く出た許しに幸いとばかりに飛びついた彼は、寝台に横たわる妹を見て一瞬表情をゆがめたものの、その口から漏れる息が穏やかな物である事に気付きほっと息を吐き出した。

「トゥスクル様・・・・妹は、ユズハは・・・・?」
「大丈夫じゃよ。少し興奮してしまっただけじゃ、発作が起こった訳ではない」

其の言葉にオボロはもう一度、ほっと安堵の息を吐き出す。
だが後ろから聞こえてきた衣擦れの音に、再び纏う雰囲気を硬質化させた。

「お前ら・・・・・」

だが、今にもハクオロとアマネの二人に飛び掛りそうだったオボロを止めたのは、この時も妹の声だった。

「お兄様・・・・」

か細いけれど、しっかりとした口調で呟かれた言葉にオボロは怒りを忘れて飛びついた。

「ユズハっ! 大丈夫か、何処か苦しい所は無いのか?」

あれやこれやとまくし立てる兄の言葉にユズハは「大丈夫です」と弱いながらも微笑みながら頷いた。
其れを見てオボロは「ほっと」息を吐き出す。

「アマネ様がお薬を飲ませてくれましたから」

妹の穏やかな言葉が其の名を呼んだ時、オボロの中に再度先ほどと同じ強い感情が生まれる。
けれど妹の前だからと、先ほどのように行き成り飛び掛らないくらいの冷静さは残っていた。

「・・・・・・そうか、妹が世話になったな」

幾分か感情を抑えた声がそう告げる。けれどアマネにもハクオロにも、それが彼の本心からの言葉ではない事は解っていた。

「いえ、出切る事をしただけですから」

けれど余計な事を言って、再度彼の機嫌を下降させることも無いだろうと当たり障りの無い言葉を返した。
それが合図だったかのように、トゥスクルが「そろそろ戻らんとな」と口に出す。
「よっこらしょ」、と声を上げて椅子を立つ彼女をアマネが支えた。だがそれに異を唱えるようにオボロから声が上がった。

「トゥスクル様、もうお帰りになられるのですか?」
「ああ、ユズハも落ち着いたしね。ここでもうわし等が出切る事は無かろうて」
「しかし・・・・」

何か言いたげな表情をオボロは浮かべる。けれどトゥスクルの瞳に剣呑な色が宿ったのを見て、慌てて言葉を引っ込めた。
彼にとって気に食わないのは、ハクオロとアマネだけでありトゥスクルはその数には入っていない。むしろ発作ではないとはいえ、体調を崩したユズハを診る為に彼女にはもっといてもらいたいのだろう。

「随分と遅くなってしまったからね、家に残してきた子達も心配しているじゃろう。悪いがここらで失礼するよ」
「・・・・・・解りました」

しぶしぶながらもオボロは了承の言葉を口に出した。
それに一つ頷くと、トゥスクルはユズハへ「また来るからの」と告げ部屋を出て行こうとした。
ハクオロとアマネがそれに続こうとした時、「あの・・・」とユズハのか細い声が2人を呼び止めた。

「あの・・・・・、ハクオロ様、アマネ様も・・・・・・・またお会い出来ますか?」

それは問いかけと言うよりも、また来て貰いたいという願望だったようにも聞こえた。

「ああ、また来させてもらうよ」
「私もです」

2人からそう言葉が出ると、ユズハは心底嬉しそうに、笑みを浮かべた。



「・・・・もう来るなよ、お前ら」

砦の入口まで戻り、馬へ跨ろうとしていた際、オボロからユズハとは正反対の見送りの言葉を受けた。
全く似ない兄妹だと、呆れながらそれでも彼からこの言葉をかけられる事はすでに3人とも予想済みであった。
トゥスクルが「全くこやつは…」、と小さく呟く声が聞こえてくる。オボロに従う双子の少年達も、彼の後ろで困った様な表情を浮かべていた。

「・・・と言われてもな、ユズハと約束をしてしまったからな」

ハクオロが律儀に返事をするが、それが余計にオボロの気に障った様で「うるさいっ、とにかく来るなったら来るな!」、とまるで駄々っ子の様な言葉が返ってくる。
どうやら彼がユズハと交わした、"次に会う約束"がお気に召さなかったらしい。ドリィとグラァがその言葉に、「だって、ねぇ・・・」「うん、そりゃあねぇ・・・」と小さくつぶやく声が聞こえてくる。

オボロの視線の先にあるもの、それはハクオロの指に結ばれたユズハの髪の毛だった。再会できるおまじないです、と微笑みながらそれを結んだ妹は、兄がそれをどんなにほどいてしまいたかったかか等気づくはずもない。未だに憎々しげにそれを睨みつける彼に、トゥスクルが再度「バカ者が・・・」、と呟いた。

「もう良い、ハクオロ、出しておくれ」

呆れを含ませた声でトゥスクルが促すと、ハクオロもそれ以上は何も言おうとはせず馬を走らせ始める。アマネも彼らから借りた馬に跨り、彼らの後を追う。

「二度と来るなーーー!!」

と、叫ぶオボロの声を後ろで聞きながら。

【あとがき】
オボロは追い出されましたが、ハクオロさんは中に居ました。
何故って、そうでないとユズハとハクオロさんが仲良くなってくれなくて話が進まないからです♪
おまじないは後で結構重要な役割を持つ・・・・はず。多分
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