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どうしようもない片思いで10のお題

どうしようもない片思いで10のお題
[ ユリウス×アリス←他キャラ ] 
8/10 Complite!

1:その他大勢の中のあたし
ペーター・ホワイト

「アリスっ、待っていましたよっ!!」

今日も自分は同じ言葉を繰り返す。
気まぐれに訪れてくれる彼女に向かって。

辛い思いにさいなまれるくらいなら、違う世界で幸せになってもらえれば良いと自分の世界に引き込んだ。
辛い記憶を全て忘れさせて。この世界で、自分と同じ世界で幸せになってもらえば良いと。
そう願って。

ああ、でも何故だろう?
彼女を真っ先に見つけたのは自分なのに?
誰よりも彼女を思っているのは自分なのに?

誰よりも彼女に思ってもらえるのは自分ではない。

「ずっと待っていたんですよ。早くあんな薄暗い陰気な所から出てしまってくださいよ! 貴女の部屋なら何時だって準備が出来ているんですから」
「ずっと、貴女がここにいてくれれば良いのに・・・・」

自分の言葉は彼女に届かない。
なのに自分は今日も彼女に同じ言葉を放つ。

決して聞き入れてはもらえない”愛の言葉”を。

ペーターの愛って解りやすくて、解りにくい。


2:祈りにも似た羨望
ボリス・エレイ

「ねぇ、アリスってさ時計屋の何処が好きなの?」

唐突な質問にアリスは「はぁ?」、と目を見開いた。
いや、彼が唐突なのは何時ものことだ。何時も唐突に現れて、自分の好きだというナゾナゾの答えを求めてくる。
気遣ってくれる事もあるが、方って置かれることも多い。きまぐれな猫そのものの彼が唐突に問いかけてきたのは、何時もとは違った謎かけの言葉。

「何よ、突然?」
「いや、何か気になっちゃってさ。だってあの時計屋さんだぜ」

酷い言われようだ。アリスはムッとしながらも努めて平静な声を出して答えた。

「ええ、私の恋人はあの時計屋さんね」
「それが信じられないんだって。何だってあんたがあいつと・・・」
「それ以上言ったら怒るわよ、ボリス」

と言っても自分の好きな人をけなされて良い気分でいられるはずもなく。ワントーン下がった声音にボリスは慌ててアリスに謝罪の言葉を述べた。

「・・・・・そうね、強いて言うなら『自分の事を大切にしてくるところかしら』」
「はぁ、何だよそれ?」

何度か謝罪の言葉を述べた後、漸く「もう良いわ」と許しの言葉を貰った。慌てた後でも最初の疑問は忘れていなかったのか、再び同じ質問を問いかけてくる彼にアリスは少し考えるとそう答えた。

「だってこの世界の人って、他人のもそうだけど自分の命にも無頓着すぎるのよね。ユリウスくらいなのよ、自分の命を惜しんでいるのって。あの人が引きこもっているのって性格もあるでしょうけれど、無駄に襲われるのが嫌だからでしょ」
「・・・・・・それがあんたがあいつを好きな理由?」
「そうよ、可笑しいかしら?」
「訳解んねえ・・・・」

ナゾナゾよりも更に難解な答えにボリスは頭を抱えた。

「そうかしら、単純明快だと思うけど」
「はぁ、何処がだよ。大体俺も時計屋も代えが効く存在なんだぞ。そんなもの惜しんでどうするんだっての?」
「・・・・・・・つくづくアンタを好きにならなくて良かったって思うわよ・・・」

ため息交じりに呟かれた声に、ボリスの泣きそうな声が覆いかぶさる。
そんなわけの解らない理由で自分は彼女の特別になれなかったのか、と。
きっとその訳が解るのだろう彼に、羨望にも似た思いを抱きながら。

「・・・・・訳解らんねえよ、あんたもあいつも・・・」

再びボリスは呟いた。

ボリス好きになってたら大変だったろうなあ・・・、ってあのイベント見ながら思った。


3:偶然は偶然でしかない
メリー・ゴーランド

ユリウス・モンレーは真面目な男だ。
真面目すぎて面白みが無いほど。

本来遊ぶ場であるはずの遊園地に赴きながら、ゴーランドが幾ら誘っても「仕事があるから」とさっさと帰ってしまう。
あの手この手で誘ってみたのに、彼は一度だって頷いてくれたことは無かった。

「絶叫系が苦手なら苦手だって言ってくれれば良かったのに」
「・・・・・苦手じゃない、別に平気だ」
「そんな真っ青な顔して何言ってんのよ。大丈夫、お水とか貰ってこようか?」
「平気だといって・・・・・・うっぷ・・・・・・」
「あ~、ほら無理しないで。冷たいもの貰ってくるからちょっと待っててよね! 大丈夫だからね!」

ぱたぱたと慌てた様子で水色のドレスを着た少女が近くの店へと走っていく。
その様子を物陰から眺めながら、ゴーランドはベンチに力なく座り込む男-ユリウス-へ視線をむけた。

ぐったりとした様子の彼からは何時もの皮肉気な雰囲気は一切感じられない。
絶叫系が、というより乗り物自体が苦手なのかもしれない。
これでは自分がいくら誘っても首を縦に振らなかったはずだ、とゴーランドは妙に悟ったような思いを抱く。

「ユリウス、お水貰ってきたわよ! ほら、大丈夫?」

ぱたぱたと再び音を立ててアリスが戻ってきた。手には水の入ったコップを抱えて。

「すまない・・・・」
「別に良いわよ。無理に誘っちゃったのは私だし。でも苦手なら苦手って今度からは言って欲しいわ。嫌いなものに無理に乗ってもらっても楽しめないでしょう」
「別に嫌いなわけでは・・・・・」
「ユリウスじゃなくて、私が楽しめないの。こういう所では皆一緒に楽しむものなんだから」
「・・・・・・それは隣でわいわい笑っていた奴の言う台詞じゃないと思うが」
「うっ、そ、それはまあ忘れてよ・・・。とにかく、無理はしなくて良いから。ユリウスだってほら、誰かに無理してまで付き合ってもらいたいなんて思わないでしょ!」

無理をさせているな、とは途中で気付いていたアリスだったが久しぶりの絶叫系マシンについ気持ちが高ぶってしまった。ばつが悪そうな表情を浮かべるアリスに苦笑を浮かべたユリウスであったが、やがて何時もの笑みを浮かべると「確かにそうだな・・・」と頷いてくれた。

「そうよ。別に絶叫系じゃなくても乗るものは沢山あるんだもの、今度はもっと大人しい物にしましょう」
「となると・・・あれか?」

と言ってユリウスが指し示したのはクルクルと回り続ける回転木馬だった。途端、今度はアリスの動きがぴたっとと止まってしまう。

「へ・・・・・あれはちょっと・・・。別の意味できついかも・・・」
「だろうな・・・。まぁ良い、私にも今日は時間がある。お前が満足するまで付き合ってやるさ」

途端、ぱっと顔を輝かせたアリスにユリウスも微笑み返した。気分も大分落ち着いてきたので、水の入っていた紙コップを傍のゴミ箱に投げ入れると傍らに立つアリスへ「行くか?」と手を差し伸べた。アリスも当然の事の様に微笑みながら彼の手に自分の手を乗せる。
その自然な仕草にゴーランドは彼らが昨日今日、こういったやり取りを始めたのではないという事を悟った。

2人の姿が完全に奥へ消えていったのを確認し、ゴーランドはそっと物陰から身を出した。
この世界の唯一の時計を扱える彼は、どうやら余所者の時計の扱いにも慣れていたらしい。
それとも、やはり彼女が特別なのだろうか・・・?

そっと自分の右胸に触れてみる。
いつもの様にチッチッチッと時計の鳴る音が聞こえる、ただそれだけだ。
ちくり、と痛みを感じた気がするのは気のせいだったのだろう。
これは時計であって、心臓などではないのだから。

ごめん、訳解らない。
でもゴーランドものこともやっぱり訳解らない。良い人すぎるんだよね、彼。



4:僅かでも確かな笑顔の違い
エース

「・・・・消えてしまいそうだ」

時計塔のやっかいになるようになって、どれくらい経つのだろうか?
そんな事今まで気にした事なんて無かったけれど。
決して短いとは言えない時間帯の中で、彼のそんな言葉を聞いたのは始めての事で。

塔の屋上へと通じる扉へと伸びかけていた手をエースは思わず引っ込めた。

「・・・・消えないわよ、何を言っているの?」

けれど彼女もまた彼と同じように、消え入りそうな声で返す。
何処か悲壮感の感じるその声音に立ち去ろうとしていたエースの足がピタリと止まる。

「そうだな、お前は確かにここに居る・・・・・。今はな」
「・・・・・・・消えて欲しいのかしら?」
「まさかっ!! だが・・・・」
「貴方が望まない限り、私はここから出て行かないわよ。絶対に、勝手に消えたりしない・・・」

そっとユリウスの手がアリスの頬に伸びる。
確かに彼女がここに居ると、確かめるように一瞬と惑うように手がぴくりと動き、そして恐る恐るといった様子で彼女の頬に触れた。アリスがそんな彼の手の上に自分の手を重ね合わせる。自分はここよ、と言うかのように。

「ほら・・・・、居るでしょう」
「そうだな・・・・。何故だろう、当たり前な事なのに何故か酷く安心する」
「私も・・・・こうやって貴方に触れられていると、凄く安心する」

ふわり、とアリスが微笑んだ。
嬉しげに、そして何処か悲しげに。
彼女の言葉に、その笑顔に嘘は無い。本心からの物のはずなのに---何故か胸が締め付けられた。

ユリウスの腕が彼女の身体に伸ばされる。そのまま彼はアリスの華奢な身体を抱きしめた。アリスも抵抗する様子もなく、彼のしたいままにさせている。

「消えないでくれ・・・・」
「・・・・消えないって言ってるでしょう。貴方こそ・・・・・」

今度はアリスの手がユリウスの背にそっと伸ばされた。白い腕が彼の紺色のジャケットの布地をぎゅっと握り締める。
互いが居る事を確かめたくて。

カツン、と音を立ててエースはその場から離れた。
彼らに気付かれたかもしれない、という心配は無かった。どうせあの2人は互いの事で夢中だろう。自分が居たとしても、直ぐにそんな事忘れてしまうはずだ。
時計塔の長い階段を下りながら、エースはいらだつ心を抑える事が出来なかった。ユリウスにだろうか、それともアリスに?
両方かもしれない。彼女にあんな風に触れて、自分には決して見せてはもらえない笑顔を浮かべてもらえるユリウスにと、あんな風に彼には素直に弱音を吐いて、彼だけの笑顔を浮かべるアリスにも。

ぎゅっ、と剣の柄をにぎしりめる。
今にも剣を抜いてしまおうとする思いを押さえ込むかのように。

「・・・・・あ~、でも俺その場合どっちを切れば良いんだろ?」

ぽつり、と呟かれた言葉は時計塔の長い階段の中に消えていった。

時計塔イベントで、ユリウスが「消えそうだ」とかいう台詞を言っていたけれど、アリスもまた彼が消えてしまうのを恐れていたんじゃないかなって。
だってずっと夢だと思ってたんだもんね。



5:私には貴方しかいないのに
ブラッド・デュプレ

「友人として忠告するが・・・。時計屋には近づかない方が良い」

ブラッドの言葉にアリスはむっとしたような表情を浮かべた。
だがブラッドは構わず言葉を続ける。

「これは友人としての忠告だよ、お嬢さん。あいつは君が近づいて良い人間じゃない」

イラついたような声。普段からやる気が無く、感情の起伏を滅多に出さない彼にしてみればそんな態度は非情に珍しい事だったろう。
言われたアリスも、常の彼女であればそんな彼の感情の起伏に気付けたかもしれない。けれど彼女もまたイラついていた。突然現れて、自分の大切な人を貶める台詞を言われたのだ。怒らないほうが可笑しいだろう。

「・・・・・そんな事、貴方に言われる筋合いはないわ!」

彼の一世一代の忠告は、冷たいその一言によって跳ねつけられた。

 

 

「・・・・・憎まれるのもまたあの子の心を奪う、一つの手段ではあるな」

いつもの様に突然に現れた姉は、来るなり早々物騒な言葉を呟いた。

「何の話だ?」
「解らぬはずが無いだろう、幾らお前が阿呆でもな。時計塔の前で随分と派手にやりあったようじゃの」

敵対する勢力同士、出会えば打ち合わなければならないのがこの世界のルールだ。それがたとえ勝てない相手であったとしても。

「言っておくが、仕掛けてきたのは向うからだが」
「解っておる、お前がわざわざ自分から面倒事を始めるとは考えられぬからの。だが、今回はその面倒ごとに首を突っ込んでいるようじゃが」

身内の近さからか、それとも女性の勘というやつか。彼女は時々全てを見透かしたような台詞を口にする。
今回もまた、それが何をさしているのか理解したブラッドは苦々しく表情をゆがめた。

「姉貴には関係ないことだと思うが」
「本当にそうではないのなら、嬉しいのじゃがな。残念ながら、お前とわらわは誰も知らぬこととはいえ身内同士。お前のした事はわらわにとっても関係が出てくる。特に、アリスの事に関しては・・・」

ぴくり、とブラッドの瞳がつりあがる。
たった一人の少女の名前、それが自分の時計をこんなにいらだたせるなんて、どうして想像できただろうか。

「愚かな事を考えているのであれば、止めておけ。幾ら近づくなと言っても、あの子は聞きはしないだろう。だって既にアリスの心は奪われてしまっているのだからね、お前以外の者に」
「・・・・・・・・・・・」
「愛情は手に入れられなくとも、心は欲しいといったような目じゃな。じゃが、時計屋を殺してもあの子はお前を憎んでなどくれぬじゃろう。それよりお前を苦しめるもっと効果的な方法を知っているのだから」

ビバルディの瞳があざ笑うように吊り上げられる。それは彼女が面白いおもちゃや退屈しのぎを見つけた時に好んで浮かべる表情だった。

「アリスはお前を憎んでくれなどしない。それどころか、お前の事を自分の心の中から全て追い出すだろう。自分の心にお前が宿る事、それこそがお前の望みだと知るが故にな」
「っ!!」

同姓であるが故に姉は弟より彼女の心の向かう先が見えるのだろう。
反論したくとも反論できない、それでも自分を睨みつけることをやめない弟に姉は再びにんまりと唇を上に吊り上げて笑った。

この姉弟好きかも。
アリスを取り合ってじたばたしていると良い。



6:見つめるのは背中と横顔
ビバルディ

「ほんに、酔狂な女子じゃのう、お前は」

ハートの国の女王ビバルディ。
この世界に存在するどの色よりも赤い色を好む彼女の唇を染めるのは、やはり緋色。声音は優しいけれど、彼女の唇が何か面白いおもちゃを見つけたときの子供の様に
上へ吊り上げられている事にアリスは気付いていた。

「・・・・・行き成り何よ、ビバルディ」

彼女に限らず、この世界の住民は皆自分独自のルールで動いている。やりたい事をやりたい時に行い、言いたい事をそのまま口にする。
それが相手に良い効果を齎さないとしても、決してオブラートにくるんだりはしない。

「そう思ったから口にしただけじゃ。聞き流してくれても良いよ」
「・・・・・・・・・」

口ではそういうが、彼女の言葉を無視したりすれば、恐らく次の瞬間には自分の首は飛んでいるだろう。
何しろ彼女は「首をはねるのが好きな、ハートの国の女王陛下」なのだから。

「心配せずとも、お前の首をはねたりなどせぬよ。首だけになったお前より、こうして動いているお前の方がわらわには面白く見えるからの」

アリスのそんな考えを読み取ったのか、ビバルディはやはり緋色の唇を吊り上げながらそんな台詞を言った。

「・・・・・・じゃあ、貴女が面白く感じなくなったら私の首をはねるのかしら?」
「そうじゃのう・・・」

アリスの返答にビバルディはくすくすと笑う。
グリーンの瞳がアリスの足元から頭の上につけているリボンまでゆっくりと上下に動く。
切れ長の瞳に見つめられた瞬間、アリスは自宅で飼っている猫のダイナを思い出した。こちらが撫でようと手を伸ばすと嫌がるくせに、全く構われ無いと酷く不機嫌になる猫は、酷い悪戯や業と爪を立てたりなどありとあらゆる事をしてこちらの気を引こうとするが、その時の何が最も効果的なのかを考えている彼女の目と、今のビバルディの瞳は酷く良く似ていた。

「・・・ふふ、そういえばお前の首は落としても、消えないのであったな」

死ねば時計だけを残して消えてしまうこの世界の住民と違って、アリスの身体は残る。
滅茶苦茶な時間が流れるこの世界だ、きっと永遠に切られた当時のままの姿を保ち続けるのだろう。

「・・・・・・お前の首をわらわの部屋においておくというのも、おもしろいかもしれぬの」
「・・・・・・・・・冗談よね、ビバルディ?」

心底嫌そうな表情を浮かべたアリスとは対極に、ビバルディの顔は明るく良い事を思いついた、と言わんばかりに輝いている。

「無論本気じゃ」
「・・・・・・・・・・」

だってそうすれば――――彼女はもう何処にも行かない。
自分以外誰も見ない。

あのアリスの心を奪った時計屋さえも。

 

ビバルディの愛は純真な分、重くて濃いと思う。


7:夢でさえ
ナイトメア

「夢だよ」

と言うのが何時もの彼の台詞だった。
目が覚めたら消えてしまう夢の中で、夢のまた更に夢の中にいる彼は「夢だ、夢だ」と自分に繰り返す。

「・・・・・・あんたってどうしてそう、夢だとしか言わないのかしらね」

何時か聞いてみたいと思っていたことだった。
夢は夢、目が覚めたら消えてしまう儚いもの。
自分の夢の住民である彼らよりも、更に儚い存在である彼。二重に眠っていなければ出会えない彼。

「・・・そりゃあ私はナイトメアだから、夢を見させるのが商売みたいなものだし」
「そりゃあそうでしょうけれどね」
「それに、夢の中でないと君とは会えないしね」
「・・・・・別に夢の中じゃなくても、あんたが外に出てくれば良いことじゃないの?」

確かに彼はナイトメアではあるが、夢の中にだけいなければいけないというわけではないらしい。
以前ユリウスとエリオットが時計塔の中で打ち合った事が有ったが、その仲介役を務める為に夢の中から出てきたはずだ。

「こっちに来れば良いのに。そうすれば、結構頻繁に会えるんじゃないの?」
「いやだね、私はここが気に入っている。それに面倒は病院と同じくらい嫌いな物だ」

何処かの帽子屋と似たような台詞を言う、情けない夢魔の姿にアリスはため息をついた。

「・・・・・・それに」
「ん、何?」

 

「そっちで君に会うと、絶対に邪魔が入りそうだからね」

 

会える機会は減ったとしても、邪魔の入らない夢の中の方がどれだけ落ち着いて彼女と供にいられるか。
ここなら滅多に邪魔は入らない。
帽子屋も、女王も、遊園地のオーナーも、そして時計屋さえも。
この中に居る時だけは、自分が彼女を独り占めできるのだから。
ナイトメア・ゴットシャルク・・・。
何故かゴルシャックと思ってた。トが抜けただけで荘厳さが結構抜けるんだなぁ・・・。



8:零れ落ちてゆくもの
エリオット・マーチ

 

「私が殺してやるわ、エリオット」

カチリ、と彼女の白い指がトリガーを引く。
銃の扱いなど慣れてないだろうに、なのに銃口の先は真っ直ぐに自分に向けられていて。
それが僅かに震えているのは、彼女がまだ自分に銃を向けることを躊躇っているためか、それとも単に鉄の塊であるそれの重さのためだけなのか。

前者だったら良い。
そうは思うけれど、エリオットはそれが正しくない事を知っていた。
彼女は優しいけれど、だからといって自分と自分の大切な者を脅かそうとする者を排除する事を躊躇わないだろう。

エリオットがユリウスに銃を向けた一件以来、表面上アリスの態度は以前と変わらなかったけれど、それでもエリオットに向ける仕草や表情の節々に硬いものが混じるようになったのも事実だった。
エリオットは友達だが、何時かまた、彼はユリウスに対し同じ事をするだろうという確信がそうさせるのだろう。

そしてそれは間違っていない。
エリオットはユリウスに恨みを抱いているし、それは彼がアリスの恋人だからといって帳消しに出来てしまうような簡単な感情ではないのだから。
必ず機会があれば、いや今だって時計屋の胸に銃弾をぶち込んでやりたいと願っている。


9:惨めになるだけ

10:それでも好きです / それでも好きでした
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