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1-3

どれだけ歩いたか、山深く、狩り人とて滅多に足を踏み入れないだろう山深い場所にその砦は有った。かなりの大人数が暮らしているのか、規模も大きく、櫓の上には夜分だというのに見張りが数人立ち辺りに目を凝らしている。

「こんな所に砦が?」

前を歩いていた父の驚いた声が聞こえてくる。

「誰にも言うてはならんぞ、いらぬ誤解を招くからの。アマネ、お主もな」

トゥスクルの言葉にアマネも父‐ハクオロ‐も頷く。確かにこんな山奥に、国に属さない砦が有るなどどう考えても穏やかなものが思い浮かばない。それにオボロと名乗った青年、彼は二人の少年から若様と呼ばれていたが、あの鍛えられた無駄の無い体付きから考えても、まともな職に就いているとは考えにくい。よく見積もって傭兵、悪く考えれば盗賊の類だろうが恐らく後者だろう、でなければこんな山奥に隠れ住まなければならない理由が無い。

だが馬から下り、砦の中に入った途端、アマネは自分の考えを改めさせられる事になる。無論、彼らが"ただの"盗賊ではないというわけではなく、"訳あり"の盗賊だというに気付いた程度だったが。

砦の中は広く、ちょっとした豪族の屋敷くらいの大きさがあった。飾り気こそ無いものの、かえってそれが品の良さを感じさせる。盗賊の隠れ家に品を感じるのもおかしいかもしれないが、そう感じさせる何かがここには有った。時々すれ違う者達がオボロの姿を見つける度に頭を下げていく。その姿もまるでよく仕付けられた女官の様でアマネを更に戸惑わせた。傍らを歩く父も同じように感じているらしく、前を歩いているトゥスクルに何度か説明を求めるように視線を向けるが彼女も、勿論オボロもそんな二人を尻目をどんどん先へ進んでいってしまう。

「あんた達はここで待っていてもらおう」

戸惑いながらも進んだ先にあった部屋の前でオボロが二人へと言い放つ。だが次の瞬間、トゥスクルが「お前達も入るが良い」と、その言葉を否定した。

「トゥスクル様!」、と悲鳴の様な声をオボロは上げたが、トゥスクルは「わしの言うことが聞けないのかえ」、とそれを黙らせる。

「大体、お主はあの子に過保護すぎる」

「ふぅ」、とため息混じりにつぶやかれた言葉にオボロも言葉を返す事は出来なかったようで、しぶしぶながらも廊下と部屋を区切っている薄い紅色をした布地を払い室内へと足を踏み入れた。

「お兄さま?」

途端、聞こえてきたのはまだ幼さの残る少女の声。少々声が弾んでいるようなのは、兄が戻ってきた事を素直に喜んでいるからだろう。

「ユズハ、まだ起きていたのか? ちゃんと身体を休めないと駄目だろう」
「大丈夫、今日はとても気分がよいの」

だがオボロは「駄目だ」、と強い口調でユズハを横たわらせた。その有無を言わせない仕草が何となく気にはなったが、少女が大人しく従っているので何も口には出さなかった。

「トゥスクル様? いらっしゃって下さったんですね」

少々強引に床につかされはしたが、少女は気にした様子もなく、明るい声をあげた。

「おお、気付かれてしまったかの。今日はわしの勝ちかと思ったんじゃが」
「はい、暖かな薬草の香がしましたから。それに、お客様?」

少女の閉じられたままの瞳がハクオロとアマネに向けられる。その全く邪気の無い問い掛けに一瞬どう答えようかと返答につまったものの、「ほれ」とトゥスクルが早く答えろて言うようにハクオロを肘でこづいた。

「あ、あぁ。自分はハクオロという。今日はトゥスクルさんのお供で来たんだ」
「アマネと申します」

二人が返事を返すと、ユズハは嬉しげに笑みを浮かべながら言った。

「お客様何て初めて、こんな格好でごめんなさいね」

そう言って身体を起こそうとするが、やはりオボロに止められてしまう。

「トゥスクル様、早くユズハを診てやってください!」

口調は丁寧だが、明らかに苛立った様子になったオボロにトゥスクルもそれ以上はいけないと悟ったのだろう。
「あ、あぁ。そうじゃったの」、と曖昧に返事を返すとユズハの傍へ歩み寄った。
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