FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

1-2

父の思念を追って歩く内に気付いたのは、相変わらずヒトは何時果てるかとも解らない争いを続けいるということ。
変わったことと言えば、以前目覚めていた頃と国の名前が変わっていた事くらいで、後は目新しく思うものは何も無いということだった。
この事があの優しい父に知れたら彼はさぞ悲しむだろう。自らを災いとし、子等に干渉する事を恐れ、眠りを望んだ父。

しかし父が何もしなくてもヒトは互いに争い、他族を蹂躙し続ける。
それとも喜ぶかもしれない。ヒトが自分の高みに自ら近付きはじめたと。

いずれにしろ、これからヒトの世は大きく動くだろう。父が望まず、また望んだ通りに。
壱であり弐である者が目覚めたのだから。
それも、同時にーー。

 

 

キィンーーー鉄と鉄の重なり合う音が闇の中に響く。
一人はまだ若い男の思念の様だが、それと打ち合う思念は自分がよく知る存在。
アマネは足取りを早めた。

月下の下、激しく打ち合うのは二人の男。

一人は動き易そうな、大きくはだけさせた服装をしており、もう一人は白く襞の長い服を纏っていた。だが何よりアマネの目を奪ったのは白い服を着た男の顔半分が仮面に覆われていた事だった。

「・・・お父様」

間違いない、彼だ。
けれど何だろう、違和感を感じる。
父である筈なのに、父ではない様な。
それにヒト相手にあの父があそこまで梃子摺るとは考えられなかった。
父の事だ、殺したくないと思って手加減しているのかもしれないが、それにしては動きがぎこちない。
もしかしたら、まだ先の目覚めで負った傷が癒えてないのかもしれない。どちらにしろ父に剣を向けた相手だ、ならば彼女にとっても敵であることは間違いない。考えるより早く、アマネは二人の前に飛び出していた。

「なっ!」
「何っ!」

突然、間に割り込んできた存在に男の刄がわずかにずれる。アマネはその瞬間を逃さず、杖代わりに持っていた木の枝を男の腹に叩き込んだ。
「ぐふっ!」、と男は胃液を吐き出して蹲った。途端、左右からアマネと父に向けて矢が飛んでくる。アマネは父を庇う様に、彼の前に一歩進み出ると壁を作りだした。
彼女の手の先から浮き出た水色の半透明な壁に当たって矢が跳ね返る。ついでアマネは力ある言葉を放った。歌う様な響きを持った言葉が大気の中に消えたと同時に二人の射手の周りに突風が巻き起こった。
それは突風と言うよりも竜巻と言った方が良いかもしれないくらい大きなもので、しかも大きくうねった風の刄が射手達の服を切り裂き、肌を切り裂いていく。

「ドリィ、グラァ!」

腹を抱えて蹲っていた男の口から悲鳴の様な言葉が漏れた。

「きっさまぁーー!」

二刀の太刀を構えなおし、男は再びアマネへと切り掛かってくる。だがアマネは慌てた様子もなく、再度壁を作り出すべく腕を前へ伸ばそうとした。
だが、横から伸びてきた手が彼女の腕をつかんだ。

「やめろっ!」

それは父の言葉、アマネにとっては何よりも優先しなければならないものだ。
剣の切っ先が目前に迫っているにも関わらず、アマネは大人しくその言葉に従い父の方へと体を向けた。

「やめんかっ!」

まさに切っ先がアマネを切り裂こうとした瞬間、怒声の様な声が響いた。カッ、と老婆の手にしている杖が地面と打ち合わされ堅い音を立てる。

「トゥ、トゥスクル様・・・」

男の口から驚きとも怯えともとれる声が発せられる。

「わしの身内に剣を向けるとは、どうゆう料簡じゃ、オボロ」
「み、身内? トゥスクル様の!」

肯定するようにトゥスクルと呼ばれた老女は首を上下させた。
それを見た男は慌てて刀を後ろへ隠す。大の男が、どう見ても彼より力の無い老女に怯える様は傍で見ていた二人をあっけにとらさせるには十分なものだった。

「トゥスクルさん、これは一体・・・」

父が戸惑った声で彼女に問い掛けると、トゥスクルは男に向けていた強ばった表情を和らげ二人へ振り向いた。

「ああ、すまなかったね。それよりもお主、どうしてこんな所におるんじゃ?」

父がエルルゥという少女‐彼女の孫らしい‐に頼まれて追い掛けて来た事を告げるとトゥスクルは合点がいったというように「すまなかったねぇ」と謝罪の言葉を口にした。

「少しばかり身体の悪い子がおってな、時々こうして様子を見に行ってるんじゃよ」
「しかし、ならどうしてこんな夜更けに?」

父の言葉にトゥスクルは「色々と事情があるんじゃ」、と言うだけでそれ以上は何も語ってくれようとしなかった。

「さて、お主・・・」

そして次に彼女の鵈色の瞳がアマネへと向けられた。

「?」

当然の事だが、アマネに彼女の顔に覚えはない。だがその瞳の色をどこかで見たような記憶は有った。

「やはりの・・・、アマネ、そうじゃな?」
「!」

老女が自分の名前を言い当てた事にアマネは驚き、声を無くす。だが反対にトゥスクルは笑みを深くすると、「久しぶりじゃのう」と嬉しげにつぶやいた。

「トゥスクル様、そいつの事、ご存じなんですか?」
「こりゃ、そいつとは何じゃ! この子はわしの薬師の師匠・・・である方の孫なのじゃぞ」
「ト、トゥスクル様の師匠!」
「・・・の孫じゃ」

青年と何時の間に傍に来ていたのか、よく似た面立ちの少年達がそろってすっとんきょうな声をあげる。だが驚いたのはアマネも一緒だった。薬師の師匠など、一体何処からそんな話が出たのかさっぱり検討がつかない。

「トゥスクル・・・?」

だが、薬師という言葉と老女の名前にアマネは覚えがあった。そして何処か頭の内に引っ掛かった彼女の瞳。

「まさか・・・?」

ありえない事では無かった、けれどこれまでに無かった事も事実だった。見知った人間にまた会うことができるなんて―アマネの驚きを感じ取ったのか、トゥスクルはすっかり皺のよった顔を緩める。

「積もる話もあるが、わしらにはこの後少々用事があっての・・・」

まるで本当の孫にでも語り掛けるような優しい口調にアマネの表情は益々困惑したものとなっていた。以前は、アマネが彼女にこうして語り掛けてやっていたのに。

「そうじゃな・・・お主達も一緒に来るといい。其の方があの子も喜ぶじゃろうて」
「トゥスクル様、こんな得体の知れない奴らを」

ずっと蚊帳の外に放り出されていた青年がたまらず大声をあげたが、トゥスクルは「わしの身内を疑うのかえ」、と黙らせる。

「それに・・・、アマネは腕の良い薬師じゃよ。恐らく、わしよりもな」
「ト、トゥスクル様より! そんな馬鹿な」

青年達の驚いた声が閑散とさた谷間に響きわたる。一方アマネは彼らが何をそんなに驚いているのかが分からず、きょとんとした表情を浮かべていた。いや"彼らが"、と言うより父まで驚いた表情を浮かべた事にだろう。彼は知っているはずだった、アマネに薬学の知識が有ると言うことを、そして彼女こそがトゥスクルに薬学の知識を与えた者だとと言うことを。

「・・・まぁ、ここで長々と話すよりも実際に見た方が早いじゃろう。アマネ、お主も色々有るじゃろうがそれも後での」

つまり、直ぐに終わらせられる話ではないと言う事だろう、そう理解したアマネは彼女の言葉に頷き返した。

「さて、それでは行くかの。きっと首を長くして待っておるからの」

トゥスクルがそう言うと男はしぶしぶながらも頷いた。
歩いて行ける距離ではないからと馬に乗せられたアマネはトゥスクルと共に馬に乗って歩く父の姿を見つめていた。一度として、彼女を振り返ろうとしない父の姿を。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

たつやん

  • Author:たつやん
  • FC2ブログへようこそ!
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
12  07  02  11  09  08  07  06  05  04  02 
cloverclock
カテゴリー
Yggdrasil
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。