FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

3.間違えちゃった・・・・!?

3.間違えちゃった・・・・!?

さすがに疲れていたのか、馬車に乗り込んで直ぐルークは意識を手放してしまった。がたがたと揺れる振動も心地よいと感じるほど深い眠りの中。馬車の椅子は屋敷の柔らかい布団とは比べ物にはならないほど固かったけれど、それでも野宿をするよりはずっとましだと思う。
ティアも漸く気が緩んだのか、隣で安らかな寝息を立ててい た。後はこのままバチカルまで到着するのを待てば良い・・・・・・と少し残念に思いながらもそう考えていた・・・のだが。

ガタンっ、と大きく馬車が揺れた。今までとは比較にならないほどの大きな振動に、慌てて飛び起きると前方から男の慌てる声と馬の嘶きが聞こえてきた。

「おいっ、どうした!!」
「ぐ、・・軍の戦艦が前に突然現れて、どうやら盗賊を追ってるらしい!!」

『そこの馬車、道を開けなさい。巻き込まれますよ』

戦艦のスピーカーからだろう、発せられた声に御者の男は手綱を握りなおし、興奮する馬達を何とか制御しようと試みる。だがその直後、今度は別な馬車がルーク達の乗る馬車の直ぐ脇をすり抜け橋の方へと走っていった。

「あの馬車を追ってるのか?」

窓から身を乗り出し、ルークは呆れたように呟いた。どんな凶賊が乗っているのかは知らないが、戦艦で追いまわさなければならないと思われるほど強そうには見えない。戦艦と比べるとあまりにもちっぽけな存在に、同情の念さえ浮かびかけたほどだった。が、次の瞬間起こった爆発音にルークはその考えを改めさせられる事になる。馬車が橋の半分ぐらいまで入った瞬間、轟音を上げて橋が落ちたのだ。ガラガラと崩れていく橋を前に、戦艦は停止せざるを得ない。

「橋が落ちた・・・・・・、あの馬車に乗ってる奴がやったのか?」
「ルーク危ないわ、いい加減戻って」

呆然とその様を見つめていると、いい加減痺れを切らしたのかティアによって無理やり馬車の中へと連れ戻された。

「ローテルロー橋が落ちちまうなんて・・・・・・。くそっ、漆黒の翼の奴らも無茶しやがる」
「漆黒の翼? あの戦艦が追っていたのがですか?」
「ああ、奴らの担当は第三師団だからな。まぁ、タルタロスまで出してくるたぁ、驚いたが」
「待てよ、タルタロスってマルクトの陸上装甲艦の名前だろ! どうしてこんな所をマルクトの戦艦がうろついてるんだ!?」

キムラスカ国内をマルクトの戦艦が走り回るなど、ただでさえ両国の関係は良好とは言えないのに。そんなことをしたら戦争にもなりかねない、と興奮気味に言うルークの言葉にあっさりと御者の男は言った。

「そりゃあ、ここら辺は国境に近いからな。最近じゃあキムラスカの奴らが攻めてくるってんで、警備も厳重になってるし」
「待って、ここはキムラスカ王国ではないの?」
「何言ってんだ。ここはマルクト帝国、マルクトの西ルグニカ平野さ」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

全く予想もしていなかった答えに、興奮状態だった二人も黙り込む。

「・・・・・・・・・じゃあもしかして向かってる首都ってのは」
「おお、そりゃあ我らがマルクト帝国の首都、偉大なピオニー9世陛下が治めるグランコクマさ」
「・・・・・・・・やっぱり」
「そんな・・・・・そんなに遠くまで飛ばされていたなんて」

間違いでは済まされない自体に、二人とも呆然となる。ただでさえ不仲な両国。それにルークの生家であるファブレ家はマルクトでは酷く嫌われていた。勿論、首都に行ったからといって直ぐに捕まるような事は無いだろうが、キムラスカ王家の特徴を色濃く持つルークを見て、誰かが気付かないとは言い切れない。それに事故とはいえ、旅券も正式な手続きもなしに国境を越えたのだ。彼らの立場を考えても、国際問題に発達しないとは言い切れない。

「何か変だな、あんた達本当にマルクト人なのかい?」
「え、ええそうです。でも用事があってキムラスカまでいかなければならなくて」
「それじゃあ反対だったな。キムラスカならローテルロー橋を渡らずに、街道を南へ下っていけばよかったんだが。ま、橋が落ちた今じゃそれも無理だがな」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」

御者の言葉に二人は顔を見合わせ、そうして揃ってため息をついたのだった。

「んでどうする? キムラスカへ行くんだったらカイツールの国境を越えないといけないが。俺はそっちまでは行けないんでね」
「ここから一番近い街は?」
「そうだなぁ、エンゲーブだな。ちょっと道は外れるが大した距離でもないしな・・・行くなら乗せてってやるよ?」
「ああ、頼む」
「解った、んじゃあ少し遅れたからな。飛ばすからしっかり掴まってろよ」

言うが早いか、再びガラガラと大きな音を立てて走り初めた。馬車の中でルークはもう何回目になるか解らないため息をついた。

「仕方ないな、首都まで行くわけにはさすがにいかねえし」
「・・・・・・・・そうね。エンゲーブで何とか国境を越える方法を探しましょう」

落ち込んでいたがしっかりしたその口調に、ルークも頷いた。


***
 

「この道を真っ直ぐ行くとエンゲーブだ。今は収穫の時期だから、きっと賑わってるぞ」

グランコクマへと通じるテオルの森への道。ルーク達が飛ばされたタタル渓谷への道。そして、カイツールの国境へと続く三叉路の前でルークは馬車を下ろしてもらった。エンゲーブまで乗せていってくれると彼は言ったが、少し外の道を歩いてみたかったのだ。

「そうですか、ありがとうございます」
「良いってことよ、こっちも商売だからな。っと、それとコレはおまけだ。彼女さんと一緒に食べてくれ」

ごそごそ、と取り出したのは布に包まれたおにぎりだった。

「随分稼がせてもらったからな。朝飯未だなんだろ、それでも食ってくれや」
「・・・ありがとう」
「おうよ、じゃあ気ぃつけてな~!!」

ガラガラと音を立てながら、馬車は走り去った。あっという間にその姿は小さくなり、三叉路の中へと消える。

「にぎやかな奴だったな」
「そうね、がめつい所は有ったけれど悪い人ではなかったし」

そうだな、と頷きながらルークは貰ったおにぎりを包んでいる布を取った。少し大きめのおにぎりが二個、綺麗に並んでいる。

「何処かで食べて行こうぜ。ここら辺なら、魔物も大丈夫だろ」
「そうね・・・。そういえば昨日から何も食べてなかったし。さすがにお腹が空いたわ」

適当な場所を見つけ、一つずつおにぎりを取った。ぱくり、と一口含むと米の甘さと丁度良い塩味が口の中一杯に広がる。

「美味いな。何でだろうな、昔ガイに作って貰ったやつよりずっと美味い気がする」
「作り方はシンプルだけど、塩加減や具によって味も変わってくるし。これ、おかかなのね。お醤油の加減が丁度良いわ」
「ティアはおかかか。こっちは・・・・・って、お前もう食べ終わったのかよ」

見れば、ルークのおにぎりがまだ半分以上は残っているのに対し、ティアのおにぎりは綺麗に姿を消していた。男性が食べる用に作られただけあって、かなりの大きさが有ったはずなのに。

「え、ええ・・・。早く食べれるように訓練を受けたし。・・・・・・そんなに驚く事かしら」
「いや、そういうわけじゃないけどさ・・・・。俺、女って食うの遅いってずっと思ってたから」

それほど知り合いが多いわけではないが、ルークの周りの女性、シュザンヌやナタリアはどうしてこれほど、と思うほど食べるのが遅い。女性が大口を開けて食べ物と頬張るのはマナー違反だ、というのは聞いた事があるが、ちびりちびりと食べている彼女達を見ると、本当にあれだけの量で味が解っているのかと思いたくなる程だ。なにより彼女達と一緒に食事をすると、そのちびり、ちびりと食べ終わるのを待たなければならない為、彼女達との食事は遠慮したいとさえ考えていたりした。

「それは・・・軍人は何時いかなる時も、その時の状況に応じた行動を取らないといけないし、ゆっくり料理を味わっている場合ではない事が多いもの。それに私は音律師(クルーラー)だから・・・・」
「ああ、それで大口なのか・・・・」

ルークにとっては何気ない一言。けれどティアにとっては、というより年頃の女の子が大口と言われて喜ぶはずもなく 、パシッ、と頬に軽い衝撃を感じ、驚いて目を丸くするルークの視界に飛び込んできたのはなぜか肩を活からせて1人でエンゲーブの方へと歩いていくティアの後姿だった。

「ちょっ、ティア何するんだよ。ってか1人で行くなって」

慌てて残ったおにぎりを口に頬張り、ルークはティアの後を追った。だがルークが追いついても、ティアはその怒りを治めようとしない。

「何突然怒ってんだよ。俺なんか悪い事言ったか?」
「・・・・・・・・・・・・・・ばか」

心底訳が解らなさそうなルークの態度にティアの怒りはますます深くなる。結局、訳がわからないまま彼女の後を着いていくルークと怒り続けるティア。そんな2人の道中はエンゲーブに着くまで続いたのだった。


***


最初に2人を出迎えたのは二羽の鶏だった。何処かの農家で飼っているのだろうが、放し飼いにしては随分と自由なんだな、とルークはコッコ、コッコと鳴きながら道を縦横無尽に歩き回る鶏に呆れた眼差しを向ける。
村へ一歩足を踏み入れた途端、果物や野菜の濃い匂いが2人を包み込んだ。賑わっている、と言った御者の男の言葉は間違いではなかったようだ。数歩進むと道のあちらこちらに露天が並んでおり、どの店先にも今採れたばかりであろう色鮮やかな野菜や果物が並べてある。

「今朝取れたばかりのりんごだよ、お兄さん一つどうだい?」

その中で一際威勢の良い声がルークの耳に届く。振り向けば、頭に白い手ぬぐいを巻いた男がりんごを手に呼び込みをしていた。

「・・・・・・・・これってりんごか?」

ルークの前には色鮮やかなりんごが決して大きくはない屋台の上に所狭しと並んでいた。きょとん、と目を大きくするルークに屋台の男性もティアも何を言ってるのか、という顔をする。

「おいおい、見りゃ解るだろうが。これがりんご以外の何に見えるってんだ?」
「いや・・・・・、そうなんだろうけどさ。皮がついたままってのは見た事無くて」

ルークの言葉に今度は2人が絶句する番だった。だがしげしげと珍しそうにりんごを見続けるルークの様子に、それが嘘や冗談ではないという事を悟る。ルークの生家であるファブレ家は王家に次ぐ力を持つ公爵家だ。母であるシュザンヌは現王インゴベルト6世の妹でもある。
そんな高い地位にある家で使われる食糧は吟味を重ねた最高級のものばかりだが、どれほど素材が良くとも彼らの前に出る時は皮を剥かれ、料理人が手を尽くした姿となって現れる。決して生のままのりんごを丸かじりする、などという”無作法”が有るはずも無い。だが、幾らなんでも17年生きていれば生のりんごぐらい見る事も有るだろう。それこそ街に出れば幾らでも見る機会もあるだろうに とルークの”事情をを知らないティアは呆れた表情を浮かべる。

「おいおい、どういうお大尽様だ兄ちゃん。生のりんごを見た事が無いなんてよ」
「あ・・・屋敷では何時も料理されてから出てくるから。後はメイドが皮を剥いて、切ってからとか」
「か~っ!! りんごは生のままかじるのが一番美味いんだぜ! 特に俺の作ったりんごは皮だって甘いし柔らかいんだ、ほれ食ってみろ!!」

力いっぱい差し出されたりんごをついルークは受け取ってしまう。お金も払ってないのに良いんだろうか、と目の前にいる男に視線を向けるが、男は『さっさと食え』とルークを促してくる。本人が良いって言ってるんだし、なら大丈夫かなとルークは手にしたりんごを一口齧った。しょり、という音と共に口の中に甘い果汁と柔らかい実の味が広がる。少し酸味を感じるのは皮がある為だろうか。けれど決して不快なものではない 、寧ろ甘さを引き立てて更に美味しく感じるほどだった。

「美味い・・・・!!」
「そうだろう、そうだろう! そりゃあ、菓子や料理に使っても美味いがな、りんごは生のまんまが一番美味いんだぜ。おう、姉ちゃんも食ってみるか?」

しょりしょり、と一心不乱にりんごを齧り続けるルークに気を良くしたのか、男はティアにもりんごを差し出した。

「いえ、私は・・・・」

さすがに2個も貰うわけには、とティアは咄嗟にそれを辞退する。するとルークはそんなティアに不思議そうな眼差しを向けた。

「食ってみろって、本当に美味いぞ。さっきみたいに大きな口開けてさ――――」

最後まで言わないうちに、パシッ、という音と再び頬に軽い衝撃を感じた。

「ばかっ!!」

そして先ほどと同じ台詞を投げ、ティアはルークに背を向けて走り去る。

「・・・・・・・・・・ティア?」

その様を何が何だかわからない、という風に(頭が追いつかなかった)見送ったルークは、直ぐ隣で男の哀れむようなため息を聞いた。

「おいおい、兄ちゃんよぉ・・・・。女の子に向かって大口はないだろうが」
「言ったら駄目だったのか・・・?」
「まぁ、言われて喜ぶ女はそう居ないな。さっさと謝っちまいな、女の怒りは長引かせると怖いからな」

ははは、と乾いた笑いを浮かべる男は、どうやら女の怒りとやらに経験が有るらしい。ルークは一つ頷くと、「ありがとう」と礼を言い駆け出した・・・・・・が、途中でその身体がくるっと反転する。そうして屋台の前に戻ってきたルークは、ポケットから2ガルドを取り出すと男の前に差し出した。

「これ、りんごの代金。美味しかった、ありがとう」

その几帳面な様に、思わず男の顔もほころんだ。

「良いって事よ。ってそうだ、折角のお客さんだからサービスしないとな」

そう言うとりんごを一つルークの前に差し出した。

「これはサービスだ、あのお嬢さんにも食べさせてやってくんな」

その言葉にルークはふわり、と微笑むと「ありがとう」と言って再び走り出した。りんごのような紅い髪がふわりと揺れて去っていく様を男はにこにこしながら見送った。「いや~、今日は良い客に会ったなぁ」、何て上機嫌になりながら再び客の呼び込みを始める彼は。まさか自分が与えたりんごのせいで、彼らが窮地に陥る、などということを想像もせずに。


【あとがき】
やっぱり林檎イベントは外せませんので。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

たつやん

  • Author:たつやん
  • FC2ブログへようこそ!
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
月別アーカイブ
12  07  02  11  09  08  07  06  05  04  02 
cloverclock
カテゴリー
Yggdrasil
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索
RSSフィード
リンク
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。