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2.魔物とぼったくりにはご用心

2.魔物とぼったくりにはご用心

「ここは何処なのかしら・・・・? 随分と長く気を失っていたような気もするけれど」
「ああ、屋敷に居たころはまだそんなに日は翳ってなかったと思う。超振動っていうのか、俺達が巻き込まれた力は?」

とにかく現状を把握しようと周囲を見回してみるが、見えてくるのは人工の力など一切入った形跡のない岸壁や轟々と音を立てて流れる水の姿だけ。眼前は海だが、指針になるような島の姿も見つけられなかった。

「ええそうよ。私の第七音素と貴方の持つ第七音素が共鳴して、振動を起こしたの。威力は個人が持つ程度にもよるけれど・・・・・・ルーク、貴方譜術士としての訓練は受けているの?」
「え、ああ・・・少し習った事はあるけど。でもそれほど詳しくは」
「そう・・・・・・、ならそれほど遠くへは飛ばされていないかもしれないわね。・・・・・・・・謝って済むことじゃないでしょうけど、ごめんなさい。貴方は私が絶対にお屋敷まで届けるから」

ルークを巻き込んでしまったことを気にしているのだろう。屋敷にいきなり現れ、ヴァンやルークに切りかかってきた時の勇ましさは欠片も無い。それにしても可笑しなものだとルークの口元に苦笑が浮かぶ。屋敷を襲った襲撃犯である彼女とこんな風に呑気に話しているなんて。監禁状態とはいえルークも最低限の知識は身につけていた。公族の屋敷に忍び込んだ彼女がこのまま無罪放免というわけにはいかないだろう、という事も理解できている。それでも彼女を責める気持ちがわいてこないのは、巻き込まれたのが自分だけだったという事と、屋敷の者達が無事であるとわかっていたからだ。襲撃の際に聞こえた譜歌は、他者を眠りへと誘う力を持ったもの。狙いがヴァンだけだった、という彼女の言葉に嘘はないのだろう。

それに――――-

ちらり、とティアへと視線を向ける。彼女は周囲をうかがっているのか、きょろきょろと世話しなく青い瞳を辺りにさ迷わせていた。

『ああ、やっぱり似ている---―」

ローレライの記憶の中にあったユリアと重なるその姿。何の因果か、髪や瞳の色まで同じとは。雰囲気や物腰はユリアの方が彼女よりずっと大人びているのに、それでも本当に彼女が目の前にいるようでどうにも気持ちが落ち着かない。

「・・・・・・・・解った、でもバチカルまでで構わない。屋敷には俺1人で戻るから」

だからだろう、どうしても彼女への対応が甘くなってしまう。本来なら公爵邸を襲撃した犯人として捕らえなければならないのに、別人だと解っていても彼女が捕らえられるところを見たくない。そんな想いの方がどうしても勝ってしまった。彼女の理由や思惑がどうであれ、ファブレ邸という公爵貴族の屋敷を襲撃の場に選んだ以上、彼女が犯罪者である事には変わりなく、もう一度バチカルに赴いたりすれば、拘束されてしまう事は目に見えていた。だからこそルークはここで彼女と別れた方が良いと、そう答えた。なのにティアはルークのその言葉を聞いた途端、ユリアに似たその表情を不服そうにゆがめた。

「何を言っているの? 巻き込んでしまったのは私のせいなのよ、私は貴方を無事に屋敷に送る責任があるの。勝手な事を言わないで聞き分けて頂戴」

単に自分の責務を果たしたいからルークを屋敷まで送るのだ、と言うような彼女の発言に今度はルークが眉をしかめる番だった。「屋敷まで送ると言った」あの言葉は彼を気遣ってではなく、自分のためなのだと平然と言葉にする彼女にルークは自分を優しく包んでいた夢が覚めていく感覚を覚える。

「・・・・・・・・・お前、屋敷まで来るつもりなのか?」
「当たり前でしょう、何度も同じ事を言わせないで。さぁ、もう行きましょう夜の渓谷は危険だわ」

そう言うと、ティアはルークの脇を通り抜け眼前の海とは逆方向へと歩いていく。その後姿がもうこの話はもうおしまいだ、と言っているようであったがルークは突然彼女が離れていこうとする事に驚いて呼び止める。

「待てよ、ここが何処だか解らないんだろ、迂闊に動いたら・・・!」
「水の音がするから大丈夫よ」
「え!?」
「川の流れに沿っていけば海に出られるはずだわ。とりあえずこの渓谷を出て海岸線を目指しましょう。街道に出れば辻馬車もあるし帰る方法も見つかるはずだわ」
「・・・・・・・・そういうものなのか?」
「そうよ。貴方そんな事も知らないの?」

知っているのが当然だと言わんばかりの口調に流石にルークも反論しかけた。
が、それよりも先に周囲に漂う気配に気付いた為にぐっとその言葉を飲み込んだ。静寂の中、確かに自分達を伺う気配がする。動物のような、けれどそれよりももっと猛々しい気配が。

「魔物だろうか」、とルークは屋敷を飛ばされる際も掴んでいた木刀をぐっと握り締める。人の手の入っていない場所に住む魔物は縄張り意識も強く、そして凶暴な性質のものが多い。神託の盾騎士団の軍服を纏う以上、ティアは軍人なはずだ。稽古はしていても実戦の経験は無い自分より戦闘能力は高いだろう。ならば戦闘は彼女に前面に出てもらっても構わないか、とそう考えた時だった。

「魔物がいるわ・・・・・・」

近くの草むらがガサリ、と揺れ緑色の物体がゆらゆらと長い触手のようなものを揺らしながら出てきた。其れに対しティアがナイフを投げつけるとピキィー、と甲高い鳴き声をあげて後退する。図体やその動きから見ても、それほど強い魔物ではないようでこれならティア1人でも大丈夫だろうと咄嗟に構えていた木刀を下ろそうとした時、ルークの直ぐ後ろの草むらからガサリと揺らめいた。

「!!」

突然飛び出てきた存在を、咄嗟に身体をそらす事でかわしたものの、僅かに魔物の角がルークの衣服を纏っていない部分に触れてしまう。けれど擦れた痛みに顔を歪める暇もなく、ルークの身体を傷つけた魔物は、直ぐ様身体を反転させるとルークの方へ再び走り寄ってきた。木刀を振り上げる暇などない、と悟ったルークは咄嗟に木刀を前へと突き出した。
勢いに任せて走りよってきた魔物は、当然避けることも止まる事も出来ずに、それを正面から受けてしまう。赤い血液が木刀の刺さった部分から噴出し、ピキィーと甲高い声を上げながら魔物は地面を転がった。
だが致命傷には至らなかったようで、直ぐに起き上がると頭から血をたらしながらも再びルークへと向かってこようとしていた。

「ルーク、手負いの方がずっと危険なのよ。倒すならしっかりやって頂戴!」

随分勝手な言い草だ。ナイフや金属製の杖を所持しているティアと違い、ルークの武器は木刀だけだ、どうしたってダメージが軽減されてしまう。それに何を考えているのかティアは己が立つ今の位置から動くそぶりは見せず、しかも詠唱を始めてしまったのだ。彼女は譜歌の歌い手であるし、これまでも後方支援的な役割を担っていたのだろうけど、この場合は民間人であるルークを護り彼女が前線に立たなければならないはずだ。少なくとも屋敷まで送り届けると公言しているのであれば尚更だろう。

だが今その事に文句を言っている暇などルークには無かった。初めての実戦、しかも相手は人間ではないとはいえ、自分と同じ血を身に持った生きた相手なのだ。剣を習っていたのは何時かはそれを振るう日が来る事を想定してのことだった。自由は無いが確かに身は護られるあの屋敷を何時かは出なければならないと理解していたから。
だからこそ己の力だけで立てるようにと、剣を学んだ。自らの意思で。なのにいざその場になってみて、自分の考えがいかに甘いものであったかと実感する。例え人型ではなくとも同じ命を持つ存在を撃たなければならないという重圧。血を流しながら、まるで自分は生きているんだぞ、と宣言するように自分に向かってこようとする魔物に対し、剣を向けなければいけないその恐怖がルークの中に渦巻く。

『・・・・・・・・・・深遠えと誘う旋律・ナイトメア』

だがルークが戸惑う間にティアの紡ぐ譜歌は完成し、闇色の譜陣が彼と対峙する魔物の周囲を取り囲んだ。

「ルーク、今よ止めをっ!!」
「っ!!」

目の前でガクリ、と倒れ付す魔物にティアの非情とも言える言葉が重なった。一瞬惑ったルークではあったが、緊張をずっと有していた体がその言葉にまるで押されるように意思とは関係なく動き出してしまう。魔物の身体へ向かってルークは力一杯木刀を叩き込んだ。鳴き声こそあげなかったものの、木刀を叩き込んだ瞬間、魔物はビクリと身体を痙攣させ、そしてもう一度ルークが剣を叩き込み――――今度こそ完全に動かなくなった。

はぁはぁ、と荒い息がルークの口から飛び出る。身体も手もがたがたと震えて全く自分の自由にはならない。木刀にもそれを握る手にも魔物の血が飛び散り、赤く染まっていた。早くぬぐいたくてたまらないのに、身体は目の前でぴくりとも動かなくなった魔物から視線が離せなかった。

「ご苦労様、良い動きだったと思うわ。でも敵は何処から現れるか解らないのよ、次は気を抜かないようにね」
「・・・・・・・・・・・・・・・お前・・・・」

今、目の前で一つ命が消えた。ルークが、そしてティアがそれを行ったというのに彼女の口調は常と変わらない。それどころか未だ戦闘の緊張も冷めないルークへ「さぁ、もう行きましょう。次の魔物が出てくると厄介だわ」、と言ってさっさと身体を反転させてしまう。

「・・・・・・・・・っ!!」

とても”軍人らしい”態度にルークは喉元まで手かかっていた言葉さえ引っ込めてしまう。”何も殺さなくても・・・”、ともう少し彼女の言葉が遅ければルークはティアにそう言っていただろう。ティアの譜歌は魔物に充分に効いていた。眠らせたのであれば、こちらを襲ってくる事もないのだから、あのままで良かったのでは、と。けれど確かにティアは止めを、とルークに促しはしたが実際に手を下したのはルークであって彼女ではない。命を奪ったのはルークだ、彼女にその事を告げるのも咎めるのも間違いだろう。

はぁ、と一つため息をついて漸く緩和してきた足を一歩後ろへと向けた。その瞬間、ぴしゃり、と足元で水が跳ねるような音が響いた。譜業灯は無いけれど、その分自然の明かりが強く周囲を照らしている。きっと足元を見れば緑であったはずの草は赤黒い色に染まっている様子が視界に入ってくるのだろう。今纏う服は白色を基調としているけれど、ズボンの色は黒くてよかったとルークは心から思った。ズボンまで白かったら、きっと酷い色になっていただろうから。

もう一度、はぁ、とため息をつき、ルークもティアの後を漸く追いかけ始めた。

 

 

 

***

 

 


月明かりのお蔭で、夜道を歩くのはそれほど困難ではなかった。時々襲ってくる魔物と戦闘を交わしながら、ルークは少し後ろを歩くティアへ気になっていた事を尋ねてみた。

「なぁ、お前何でヴァン師匠を襲ったんだ」

さっきと同じようにピクリとティアの肩が小さく震える。だがいずれ聞かれることであったと予想はつけていたのだろう 、表情に動揺は見られない。

「プライベートな事よ、貴方には関係ないわ」

簡単な、というか余りにもそっけない返事にルークの口から自然とため息がもれる。

「あのなぁ、こうして巻き込まれている時点で充分関係あると思うんだけど」

少なくとも理由を聞くぐらいには、というルークの言葉にティアは口ごもる。だがその口は縫い付けられたように固く閉ざされ、開く事はなかった。はぁ、と再びルークの口からため息が吐き出された。

「理由を言いたくないんだったら、仕方ねぇけどさ。・・・・・・なぁ、もう一度聞くけどお前本当にバチカルまで着いてくるのか?」
「何度も同じ事を言わせないで頂戴。私は貴方を無事に送り届ける義務があるのよ」

取り付く島も無い、とはこういうことを言うのだろう。ここが何処かは知らないが、バチカルまでの道のりが短いものだとは決して言い切れない。その距離を一緒に進むのだ、少しは心を開いてもらっても良いのではないか。そんな風には思うものの、いきなり初対面の人間にプライベートな事を話す人物など居ない、という事も解るルークにはそれ以上の事を尋ねる気にはなれなかった。

ただ、良く似た少女の面影に自然とユリアとティアを混同してしまっており、自然と態度が軟化したものになってしまうユリアはティアではない。そう思うものの、何となくユリアに冷たくされているように思えて、少し落ち込んだ気分のままルークは川に沿って道を歩き続けた。

川に沿って暫く歩いていた2人だったが、他の場所よりも木の密度が高いS字型の道を通り抜けた瞬間、突然視界が開けた。空を覆っていた木々が切れ、星空が2人の頭上に広がる。其処が渓谷の出入り口なのだと示す看板が茂みに隠れるように立ててあるのを発見したルークが近づこうとした時だった。ガサリ、という草を踏む音と次の瞬間ガタン、と何か落ちる音が響いた。
また魔物が隠れていたのか、と咄嗟に身構えた2人であったが其処に居たのは酷く情けない表情を浮かべた人間の男 だった。

「あ、あ、あんたらもしかして”漆黒の翼”か!!」

酷く震えた声の男の言葉に2人はきょとん、という表情を浮かべた。

「”漆黒の翼”?」
「確か、マクルトを拠点にしている盗賊の名前だったと思ったけれど・・・。あの、私達は盗賊ではありません。道に迷ってここに入り込んでしまったんです」

ティアの言葉に男は一瞬目を大きく見開くと、今度はまじまじと2人を見つめ始めた。そのぶしつけな視線はお世辞にも気持ちのよいものではなかったけれど、誤解は早めに解いておいたほうが良いと何とか我慢をする。

「・・・・・そういえば、”漆黒の翼”は男2人に女一人って。あんたらは2人だよな、でも隠れてるってことも」
「有りませんし、私達は盗賊でもありません」

中々疑いを解いてくれない男は、感情の高ぶりもあり失礼な事を言って来るけれど、ここは感情を露にするよりも誤解を解いておいた方が良いだろうと好きに言わせておく。

「・・・・・おい、あんたさ俺達を疑ってるけど、自分だってこんな所で何をしてたんだ?」

だが一人でぶつぶつと言い続ける男に、さすがに辟易したルークが男に問いかける。

「へ、俺は馬の為の水を汲みに・・・・・・。辻馬車の車輪が壊れちまってな、やっと修理が終わったんだがこんな時間になっちまったんだよ」
「辻馬車!? それは何処まで行くものですか?」
「あ、ああ首都までだが」

男の言葉に2人は顔を合わし、頷きあった。

「好都合だな、乗せてって貰おうぜ」
「ええ、首都まで2人ほどお願いできますか」

そう言った瞬間、男はころっと態度を変えた。

「何だ、お客さんかよ。さっさと言ってくれよな、そういうことは」

言わせなかったのはお前だろう、と内心で毒づく言葉をぐっと飲み込んだ。

「それじゃあ、首都まで2人合わせて・・・・・そうだな1万2000ガルドってとこだな。前払いで頼むよ」

うきうきと金額を言葉にする男(現金な奴だと思ったが)とは対照的に、ティアの表情が曇る。

「・・・・・高いわね」
「そうなのか?」

辻馬車の相場など知らないルークがティアに尋ねる。

「相場の2倍よ。幾らなんでも、ぼったくりだわ」
「街から乗せるんだったら相場の金額を貰うんだが。あんたらは外でのお客さんだからな。外で馬車を止めたりしてると、何時魔物や盗賊に襲われるか解らねえし、ま、危険手当がつくってことだ」
「そんな無茶苦茶な・・・」

街中で適応されるルールや法が、外では幾分か緩和されるという事はルークも知っていた。街の外まで目が届かないというのも理由の一つなのだろうが、男の言った通り街中と同様のルールを受け入れて自分の身が危険に晒される場合も多いのも事実だ。身元がはっきりしない者を受け入れ、もしそれが盗賊だったとすれば財産はおろか自分の命さえも奪われる可能性がある。

「屋敷まで行って貰えれば、それくらい直ぐに払える。後払いじゃ駄目なのか?」
「こっちも商売なんでね、今すぐに代金をもらえないってんなら乗せるわけにはいかねえな」

商売とはいえ非情な言葉にルークの眉根が上がる。これではどちらが盗賊なのか、弱みに付け込んで、金を多く取ろうとする男の様子は正直見ていて気持ちのよいものではない。ふと、ティアの方を見ると何やら悲壮な面持ちで胸元の辺りを握り締めている。法衣に隠れてはいるが、そこに小さな―恐らくペンダントだろう―膨らみを見つけたルークは、更に一層眉根を寄せた。

「どうするんだ、払えないって言うんだったら・・・・・・」
「待ってください、これで・・・・」
「ほら、これで足りるだろ」

ティアがペンダントを取り出すよりも早く、ルークは首にかけていたネックレスを男に向かって投げていた。弧を描いて落ちてくるそれを男は慌ててキャッチする。小さいがその分凝ったデザインが施されたネックレスが月明かりにキラキラと輝いていた。

「底値でも2万はする。あんたの危険手当って奴と合わせても充分だと思うけど」
「ルーク、駄目よそんな高価なもの!! お金なら私がっ!!」

ティアもペンダントを差し出そうとするが、ルークはそれを手で制した。

「代金は払ったんだ、もう馬車に乗せてもらっても良いだろ」
「ああっ勿論だ!! っと、その前に水を汲みに行かせてくれ。馬車はこの直ぐ先に止めてある、好きに使っててくれ」
「解った、行こうぜティア」

上機嫌な男は直ぐ様転がった桶を拾いあげると、川の方へ歩いていく。現金な奴だな、と思いながらもいい加減それを口に出すのもおっくうになってきていたので、ルークはさっさと馬車の方へと歩きだした。

「・・・・・あの、ルーク」

だが後ろの方で小さな声がルークを呼び止める。振り返ると申し訳なさそうに俯いたティアの姿があった。

「ごめんなさい、私のせいでまた・・・・」

悲壮感さえ漂わせるティアに、再びルークは何とも言えない感情を抱く。そんな顔をさせたくて、したことではないのに。迷惑をかけてしまった―――、と続く言葉に悲しささえわいてくる。

「・・・・・・・別に、あんなの大したもんじゃない。それよりお前一々気にすんなよ。そんな顔で何度も謝られるとうざいって」
「え、ええ・・・ごめんなさい!!」

無意識にだろう、再び謝罪の言葉を口にしたティアにルークは思わず顔をそらしてしまう。こんな時、幼馴染の彼ならばもっと良い言葉を紡げるのだろうが。自分にはそんな語彙など無い。代わりに出るのはため息ばかりだ、とまたため息が口からもれる。聞こえてしまったのだろう。ティアの気配がまた沈んだのを感じ、ルークは技とそっけない口調で言った。

「ほら、さっさと行くぞ」

言葉と共に歩きだすルークに、慌ててティアも歩き始めた。その小さな足音を聞きながら、ルークはまた(今度は聞こえないように)ため息をついた。すれ違いばかりの感情に、ルークはもっと語彙を勉強しておけばよかった、と後悔する。けれどそういう問題でもない、と言う事にルーク自身は未だ気付いていなかった。


【あとがき】
ネックレスは首周りのチェーン部と胸元のトップ部が一体にデザインされた宝飾品で、ペンダントは、チェーンなどに付けて使う宝飾品だろうです。なので、ルークのはネックレス。
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