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1.初めて出会ったけれどとても懐かしい

さやさやと風を受けて花が揺れる。月の光を受けて白く輝く花―それがセレニアと呼ばれていると言う事は少女が死んで随分経ってから知った―が、まるで絨毯のように隙間無く咲いていた。まるで花自身が白光しているかのような光景に、一瞬息をするのも忘れるほど見とれてしまう。

『ああ――――そうだ、彼女はこれを望んでいた・・・・・・』

唐突に蘇った記憶。何が欲しい、と聞くと少女は白い花が欲しいと言った。闇の中でも咲く白い花が欲しいと。彼女と会話が出来るのもあと僅かだろうと言う事は惑星の記憶を司る"彼"で無くとも解っただろう。其れほどまでに彼女の変わりようは凄まじかった。別れの前にもう一度声を聞きたかった。そう思って尋ねた自分に彼女は欲しいものがある、と言った。

『花がね、欲しいの。陽の光を浴びなくても育つ白い花が、研究してみようとはしたんだけど駄目ね。預言(スコア)を詠むみたいに上手くはいかなかったわ・・・』

寝台に横たわりながら、彼女は窓の外を指差した。既に彼女は自力で起き上がる事が出来なくなっていたが、横たわりながらも景色が見れるようにと窓には工夫がされていた。彼女の子供や夫が世話をしているのか、その先には赤や青の花びらを付けた花々が植わった花壇がある。だが月や星明りがどんなに明るく照らそうとも、太陽の光の中で見るよりも色はくすみ、鮮やかさは欠片も無い。それを見た瞬間、何故彼女がそんな事を言い出したのかが理解できた気がした。白い花、しかも闇の中で太陽の光を浴びずとも咲くそんな特別な花を必要とする場所など自分は一つしか知らなかったから。

何故今になって、という気もしたが、今だからこそ欲しくなったのかもしれない。自分の死期が近い今だからこそ―――。

太陽の光を必要としない花を作る事はそう難しいことではなかった。光の代わりに第七音素(セブンズフォニム)を吸収し、成長するように手を加えてやれば良いだけの事だったのだから。猛毒の風が満ちた魔界(クリフォト)は、高濃度の音素(フォニム)が満ちる地でもある。人が住めなくなり捨てざるえなくなった地が、嘗て彼らが最も望んだ場所になるとは何と皮肉な事だろう。もっとも、魔界(クリフォト)の音素(フォニム)は瘴気と結合してしまう為、もし身体に取り込めば猛毒も一緒に取り込んでしまうことになるのだが。

 

 

「ここ・・・・・・何処だ?」

 

 

圧倒されるほどに美しい景色も時間が経てば幾分かは慣れてくる。
懐かしい思い出は未だに心の大半を縛り付けてはいるが、周囲を観察する余裕は戻ってきていた。
ざっと見た限りでは街の象徴である譜業灯や民家の明かりは見当たらない。近くに川があるのだろうか、虫の声に混じって水の流れる音が聞こえてくる。

そして、人のものではないそれよりもずっと研ぎ澄まされた気配が闇の中に幾つか感じられた。野生の動物よりもずっと猛々しい気配を帯びたそれは魔物のもの。どうやら随分と人里離れた所へ来てしまったらしいとルークは小さくため息をついた。
オールドランドには強弱の違いはあれ、至る所に魔物は生息している。だが人が住む場所、つまり村や町などだが、そういった場所に住む魔物は定期的に駆逐される為、これほど濃い気配を感じることはなかった。

群青色に染まった空を見上げれば、これまた街の明かりに邪魔をされていない自然なままの星が輝いている。だが生憎と星を詠んで方角や自分の居る場所を知る、などという高度な技術を自分は身につけてはいなかった。まさかそんな技術が必要な状況に陥るとは思いもしなかったから。

まぁ、今そんな事を言っても仕方が無いのだとルークはため息を飲み込みながら、とりあえず自分をこんな場所に連れてきた原因となった人間を見てみようと身体を反転させる。

"彼女"はまだ意識が戻らないのか、身体の大半を白い花の絨毯の中に埋めていた。ルークはとりあえず怪我が無いかどうか調べようと、その身体を起こそうとして――――固まった。

「―――ユリア?」

月明かりが見せた幻か、それとも未だ心を占める思いの為か。抱き上げた少女の姿は、嘗て自分が知っていた少女のものととても酷似していた。

「・・・・・・ぅっ・・・」

声に反応してか、腕の中の少女が僅かに身じろぐ。高まっていく鼓動に合わせるように序々に開いていく瞳、けれど自分は見る前からその瞳の色が解っていたような気がした。



彼女が最も愛した色だ。空の色、海の色、そして"彼女"の色。
二度、三度の瞬きの後、完全に開かれた少女の瞳はやはり想像したとおりの"青"。知らず苦笑がルークの口からもれ出る。これは何かの冗談なのだろうか?

 

『白い花を植えるわ。魔界(クリフォト)に、そしてここにも。遠く離れていても同じ花が咲くのよ。大丈夫、何時かきっとこの二つの場所が元に戻る日が来る』

 

"彼"が渡した花を見ながら、彼女は満足そうに呟いた。その言葉は彼女が詠んだ預言(スコア)とは遠く離れた言葉だったけれど、彼女の願いでもあったから。

「貴方は・・・? 私達超振動で飛ばされてしまったのね・・・・・・・。ごめんなさい、私の責任だわ」

ああ、声まで似ている、とルークは喉元まででかかった言葉を飲み込んだ。

ユリア―――――これは、何かの冗談か?
それとも貴女はこれが見えていたのか? 今のこの瞬間を。



『そうすれば、きっとまた会える・・・・・。きっと、それは"彼女"にもう一度会える日になる。そうでしょう、ローレライ・・・・・・・・』



「私は、ティアよ。貴方は私が責任を持ってバチカルのお屋敷に戻すから。ルーク」
「ああ・・・・・・、頼む」

セレニアの花。ユリアの願いによって生まれた花が咲く中、少女と出会った事は偶然、それとも必然なのだろうか。




【あとがき】
ルクティアではありませ~ん。
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